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研究・社会貢献
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科学研究補助金 CaseStudy30


脂肪細胞のダイオキシン受容体(AhR)はインスリン抵抗性誘発の責任分子か?

健康衛生学研究室 教授 榛葉繁紀
戦後におけるわが国のライフスタイルの変化は糖尿病、高血圧および脂質異常症などのいわゆる生活習慣病の患者数増加を招いています。例えばわが国における糖尿病患者数は現在約950万人と推定されており、またそれにかかる年間の医療費は1.2兆円と過去最高を更新しています。そのため糖尿病は五大疾病のひとつに指定され、国策レベルにおいて対策の強化が求められています。世界的に観ても糖尿病人口は爆発的に増え続けており、2013年現在で糖尿病有病者数は3億8,200万人(有病率 8.3%)にのぼり、2030年までに5億9,200万人に増加するとの予測が算出されています。特にその増加の程度は発展途上国において拡大しており、糖尿病の制圧は、富裕国のみならず世界的な緊急の課題であるといえます。糖尿病への罹患要因として、食事性脂肪の過剰摂取や運動不足などが挙げられますが、ダイオキシン類などの内分泌かく乱物質への曝露もそのひとつである考えられています。現在、わが国においてダイオキシン類の排出レベルは減少し、高濃度曝露とその急性毒性が問題となる可能性は少ないですが、最近の国内外における多くの疫学研究からダイオキシン類に対して職業曝露あるいは事故曝露などが無い一般住民においても血中ダイオキシン類量と糖尿病発症との間に正の相関が示されています(図1)。
図1.ダイオキシン類への職業曝露および事故曝露がない日本人と糖尿病の関係

ダイオキシン類をはじめとする化学物質の
人への蓄積量調査

以上をふまえ私たちは、脂肪細胞特異的AhR 欠損マウスを確立しました。本マウスの使用により従来成し得なかった極微量ダイオキシン類の慢性曝露による脂肪細胞の機能かく乱とそれに起因した疾病の発症メカニズム解析を行うことが可能となりました。例えば、本研究では本マウスに高脂肪食負荷を与えた(=肥満化させた)後、糖負荷試験ならびにインスリン負荷試験を行いました。その結果、普通のマウスでは、肥満に伴い糖負荷試験やインスリン負荷試験のスコアが悪化しましたが、脂肪細胞特異的AhR 欠損マウスにおける悪化の程度はわずかでした。この結果は、疫学的に示されてきた「極微量ダイオキシンの持続的な曝露による慢性毒性としてのII型糖尿病」において、脂肪細胞におけるAhRが発症の責任分子であることを強く示唆しています。

今回の研究で得られた結果は、ダイオキシン類の新しい毒性誘発機序を明らかにしただけではなく、AhRをターゲットにした新しいタイプの糖尿病治療薬開発の可能性を示しています。
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