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研究・社会貢献
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科学研究補助金 CaseStudy40


BMP/Smadシグナル制御に着目した天然資源からの新規骨形成促進薬の網羅的探索

生薬学 助教 矢作忠弘
日本は世界でもトップクラスの長寿国ですが、健康寿命 (男性:80.21歳 女性:86.61歳) と平均寿命 (男性:71.19歳 女性:74.21歳) に約10年の差があり、実際には多くの人が長い間「健康ではない」状態で過ごしています。その理由の1つに骨粗しょう症による骨折があげられ、特に大腿骨頚部骨折は高齢者が寝たきりになる理由の上位となっています。骨粗しょう症は、現時点で患者数が1300万人ほどと推定されていますが、自覚症状が現れないため、気付きにくく骨折してしまって初めて認識する疾患です。しかし、高齢者の骨折による寝たきり状態は介護が必要になり、日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL) や生活の質 (Quality of Life:QOL) の著しい低下を招きます。よって骨粗しょう症を予防し骨を健康に保つことは、超高齢化社会である我が国において必要不可欠なことだと考えています。
骨粗しょう症は、閉経や加齢に伴う原発性骨粗しょう症と内分泌疾患やステロイド薬の内服に由来する続発性骨粗しょう症に分類されます。そして低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し骨折の危険性が増大する疾患です。骨は、破骨細胞が行なう骨吸収と骨芽細胞が行なう骨形成の絶妙なバランスで動的な恒常性を維持 (=骨リモデリング、図1) していますが、これが破綻することで様々な骨疾患を惹起します。現在の第一選択薬であるビスホスホネート製剤は、破骨細胞による骨吸収を抑制するため、骨吸収が増強する閉経後骨粗しょう症においてはとても有効でしたが、骨リモデリングを止めてしまうため、微小な骨損傷や古い骨が蓄積し骨質の改善には至らず、重大な副作用を誘発していました。また、加齢に伴う老人性骨粗しょう症では、様々な要因によって骨芽細胞による骨形成の働きが減弱し、破骨細胞による骨吸収が相対的に上回り引き起こされています。
これらの背景より本採択研究では、骨形成に関わる細胞内シグナルであるBMP/Smadシグナルに着目し、これまでの骨吸収ではなく骨形成を促進する天然薬物を探索することで、骨リモデリングの正常化を促し、超高齢社会において多様化する骨粗しょう症の新たな治療戦略の構築を目指しています。
現在、骨芽様細胞株MC3T3-E1を用いて、骨芽細胞分化の指標であるアルカリフォスファターゼ活性を指標にスクリーニングを行っています。探索素材としては、本研究室で所有する生薬エキスライブラリーや千葉県産植物エキスライブライリー、他研究機関より提供されているミャンマー薬用植物エキスライブラリーなどを用いて検討しています。その中で、Euphorbia属やFicus属に骨形成促進活性が認められているため、今後の成分レベルでの解析や詳細なメカニズム解明が期待されます。また、シグナル伝達への影響を検討するために、レポータージーンアッセイを構築し、BMP/Smadシグナルに直接影響を与える天然薬物の探索も並行して行っています。
これまでに市販された医薬品のうち、全体の5割以上が天然物あるいは天然物誘導体です。その人智のおよばない多彩な化学構造を有する天然物は、有機合成技術が発展した現代においても、貴重な医薬品のシーズとして光り輝いています。
本採択研究を遂行することで、骨粗しょう症の治療や予防に繋がるような天然薬物を見出し、臨床応用するためのエビデンスの構築を行っていきたいと考えています。

骨リモデリング

(クリックすると図が拡大します)

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