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図書館運営委員からのこの一冊 2011年度


本年度から図書館では図書館運営委員の先生方に推薦図書をあげていただくことにしました。このことにより学生諸君の読書に対する視野が広がり、薬学部が目指すところの「人の健康と医療の向上に貢献できる人材の育成」への一助となることになれば幸いです。

山崎 良介 先生 / ドイツ語研究室

「語感トレーニング」中村明著 岩波書店
文章には書き手の人柄が出るもので、よく「文は人なり」と言われています。文章には、いつも誤解のないはっきりとした表現が求められます。その第一歩はことばの選択にあります。文章を書くには国語辞典を座右に置いて、読み手との無用な摩擦を避けるためにも、またそれなりの品格を維持するためにも、ことばを選ぶことが大切です。このことは日常会話のなかでも、それなりのことばを選んで使わなければなりません。本書は、ことばの感触、意味・用法の微妙な違いを実例をあげて説明しています。「発想・着想・思いつき」、「心得・素養・たしなみ」、「感激・感動・感銘」などの意味は一様であっても言葉は微妙な「語感(=語のもつ感じ)」の違いがあります。語感とは、ことばがかもし出す、雰囲気、ことばとともに伝わる感じ、そう表現することで相手に与える印象でもあります。したがって表現する<人に関する語感と、表現される<もの・ことにかかわる語感と、表現に用いる<ことばにまつわる語感の三つに分かれれます。何を伝えるかという意味内容を選び、それが相手にとってどんな印象を与えるのかという表現の選択があり、「意味」は、論理的な情報を伝えるハード面であって、「語感」はその相手にどのような雰囲気・印象・感触を与えるかといったソフト面といえます。
スポーツをするにも、ハイキングをするにも「先ず、形から入れ」と言われています。文章のなかで使われた「kotoba」、「ことば」、「言葉」、「詞」という表現、形によって「意味」、ニュアンスが違ってきます。「日本語のセンスをみがく55題」と副題にあるように、感じ方の角度を55の項目に分類されています。「語感トレーニング」のための表現問題にチャレンジされ、なおいっそうあなたの言語感覚をみがいてみてはいかがでしょうか。

高畠 亨 先生 / 薬学教育研究室

「世界で一番美しい元素図鑑」セオドア・グレイ著 創元社
元素、化合物、周期表という言葉は中学生の科学1分野で学習して以来、学生の皆さんには、おなじみの言葉と思います。“世界で一番美しい元素図鑑 THE Elements”は118個の元素を、純粋な元素の状態やその化合物、その元素が含まれる身近な製品を美しい写真で表現した事典です。事典とは書かれていますが、芸術的な写真集の一面を持っています。こんな製品に含まれていたのかと感嘆することが多くありますし、その製品の写真さえ芸術性を感じるものがありました。解説も一般的な学術書と違いやさしくユーモアにあふれ興味深く書かれています。収載されている個々のカラー写真は今まで抱いてきた“元素”のイメージを一変させるように美しく、1ページ全面に結晶の芸術的な写真を見る事もできました。図鑑とタイトルされるぐらいですから、カラー写真が全ページに収載されています。また、最新の化学データ(原子量、原子半径、結晶構造、電子配置、原子発光スペクトル、固体・液体・気体の状態)もしっかりと記載されていますが、その記述がこの本の芸術性を邪魔していません。それどころか必須な記述と思われる構成です。読書というより見て楽しむ本です。化学の本とは思わずに、気楽に手にとって楽しんでください。

立川 眞理子 先生 / 環境衛生学研究室

「人類がたどってきた道」海部陽介著 日本放送出版協会
地球上のあらゆるところに暮らす人間。日本人のみならず人類はどこから来たのかと考えたことは誰にもあることだと思う。ホモサピエンスとしての進化とその移動を、遺跡をたどり明かにしてゆく。読み進むにつれて私たちにつながる遠い祖先の収まることのない好奇心と、それに突き動かされ大陸を越えてゆく姿がうかびあがり、怖れにも似た感動がある。これからの人類も同様な衝動に突き動かされて、ありとあらゆるものを科学しながら、地球からはるかな宇宙へ突き進んでゆくのではと、自らを含むその存在に悲しくもある感嘆を覚えた。科学的な事実の積み重ねが壮大な人類の歴史の側面を呼び起こすことができることを是非体験して欲しいと思う。

高松 智 先生 / 生薬学研究室

「新薬誕生:100万分の1に挑む科学者たち」ロバート・L・シュック 著 小林力訳 ダイヤモンド社
薬科系大学の教育期間が6年になり、薬剤師の専門性や責任はますます高まりつつある。医薬品の膨大な情報を1つ1つ理解し、その取り扱い、服薬指導などに活かすことは大変な作業である。しかし、薬剤師は薬をただ取り扱うことだけでよいのだろうか。薬の誕生にはそれぞれドラマがあり、数百人の研究者の日々の努力が現在当たり前のように使われている一錠の薬に集約されている。
1つの医薬品が開発される経緯、患者を救いたいという願いに反して、経営陣と衝突する研究者の苦悩、ようやく開発に漕ぎ着けたものの、予期せぬ副作用のために開発を断念せざるを得ない事態など新薬誕生の陰には様々な秘話があることは間違いない。
本書は7つのブロックバスター級医薬品(1. ノービアとカレトラ、2. セロクエル、3. インスリン、4. アドエア、5. レミケード、6. グリベック、7. リピトール)誕生に関する単なる「美談」ではない。多くのアングル、すなわち患者、研究者、経営陣、開発担当、そして普段は注目されないような部署の社員という視点から医薬品開発にまつわるエピソードに焦点をあてたこれまでに類を見ないものである。
また、メガファーマ(巨大製薬企業)誕生の経緯や戦略なども詳細に解説されており、製薬会社に関わる社員には大変参考になるであろう。医薬品を開発する側とそれを取り扱う側という双方の壁を取り払う意味でも、また、常時取り扱う薬の重みを再確認する意味でも本書の一読をお薦めします。

丹羽 典朗 先生 / 数学研究室

「零の発見」吉田洋一著 岩波書店
本の紹介を依頼されたのであるが、この場で数学の専門書を紹介しても誰も読まないであろう。かと言って、数学に関係しない本を紹介するのは自分らしくない。依頼を受けた時、何故か最初にふと頭に浮かんだのが、吉田洋一著『零の発見』(岩波新書)である。この本は、私が新潟大学の大学院生であった頃、新潟と実家のある大阪との間を移動する際、電車の中で読んだ一冊である。零を発見したのがインド人であるということは良く知られている。タイトルに『零の発見』とあるが、零を発見した人物や零が発見された正確な年代について書かれている訳ではない。そんなものは記録に残っていないので誰にも分からない。七世紀の初めの頃のインドの数学者ブラーマグプタの書物に、「いかなる数に零を乗じても結果はつねに零であること」、「いかなる数に零を加減してもその数の値に変化がおこらないこと」という零の性質が記載されているので、少なくとも七世紀以前に発見されていたということが推測できるのみである。インドで0が発見され、インドの記数法(数の表し方)がアラビアに伝わり、アラビア数字としてヨーロッパへ伝わり、世界で使われるようになった。現在我々が用いているこの記数法であるが、0が存在しなければ数を表すことができない。例えば、20928のように。ローマ数字ではVは5、Xは10、Lは50、Cは100を表し、例えばCCLXXXで280を表す。この例のように、ローマ数字の記数法では一の位が空位(無い)を意味する0という記号を必要としない。必要が無いので、ローマ数字を使っていた世界では0は生み出されなかったであろう。本書では、零の発見だけではなく、ソロバン、コンピュータと2進法、連続の問題などについても触れられていて、それらもおもしろい。歴史的な面も書かれているので、歴史好きの方にも興味を持っていただけると思う。

松原 茂 先生 / 健康・スポーツ科学研究室

「100ページの文章術-わかりやすい文章の書き方のすべてがここに-」酒井聡樹著 共立出版
本書はタイトルにもあるように、“100ページ”と短いながらわかりやすい文章の書き方のすべてを解説しています。文章を書く上で最も重要な点は「読者にわかって貰う」ということです。この「読者にわかって貰う」という一見当たり前のことが、実は難しくもあり、良い文章かそうでないかを分ける大きな鍵となっているのです。本書では、レポートからエントリーシート作成、案内文、説明文、インターネット上での情報発信文にいたるまで、様々な場面において必要にして十分な文章術のすべてを学ぶことができます。
本書は主に例文を用いての具体的な解説がなされており、文章を書く上での心がまえや、文章の理解とはどういうことかから始まり、文章全体としてわかりやすくする術、一つ一つの文をわかりやすくする術と続きます。例えば第4章の「一つの文で一つのことを言う」や「語と語の修飾関係を明確にする」など、なぜわかりにくい文章なのかという理由の説明と共に、改善のためのコツが示されており、すぐにでも実践できるようになっています。また、文章中の例文がユーモアに富んでいるのも本書の魅力となっています。
著者が理科系研究者であることから、論理的な文章構成について、論文執筆にも通ずる視点からの解説も大変興味深く、勉強になります。
普段から文章に接する機会の多い人はもちろん、そうでない人にとっても納得の1冊です。
姉妹書として「これから論文を書く若者のために 大改訂増補版」(A5判、326頁、定価2,730円)、「これからレポート・卒論を書く若者のために」(A5判、242頁、定価1,890円)、「これから学会発表する若者のために-ポスターと口頭のプレゼン技術-」(B5判、192頁、3色刷、定価2,835円、A4折込カラーポスターつき)があり、こちらもおすすめです。

荒川 基記 先生 / 医薬品評価科学研究室

「高血圧治療ガイドライン」日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会著 ライフ・サイエンス出版
高血圧は、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。高血圧症は生活習慣病の一つであり、脂質異常症、糖尿病と共にメタボリックシンドローム構成疾患の一つでもある。高血圧状態自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中を含む脳血管系疾患、腎不全などの発症リスクとなる点で治療に対する意義は大きい。本書は日本高血圧学会が総力を挙げて作成した日本人のためのガイドラインであり、高血圧症患者に最適な治療を提供するための標準的な指針とその根拠が示されている。その結果、本書は日本における高血圧症治療の方針決定、治療内容の向上に大きく貢献している。高血圧症患者のほとんどが発症原因の分からない本態性高血圧症であるが、発症原因が分かっている二次性高血圧症、合併症を伴う高血圧症等、高血圧症といっても疾患全体を理解するためには多くの知識が必要である。そのため、本書を読み込むためには授業を通じて関連疾患に対する十分な理解が不可欠である。現在、日本で上市されている高血圧治療薬は多岐にわたり、発症原因や年齢、合併症により目標高圧値や薬物治療戦略が異なる。これは高血圧治療薬の薬理作用によるところが大きく、個々の薬物の作用機序は当然理解しておかなければならない。また、高血圧治療は薬物治療だけでなく減塩、運動、禁煙などの生活習慣の改善を含むため、本書を通じて高血圧治療戦略を理解することは、薬剤師が患者状態の理解や医師を含む医療職と共に今後の治療方針の検討に協力すること、および服薬指導をする上で大変重要である。本書が学生諸君の高血圧症に対する理解の一助となり、得られた知識が薬剤師として活かされることを願っている。

小林 秀昭 先生 / ゲノム創薬学研究室

「細胞内共生」石川統著 東京大学出版会
なぜ買ったのか全く覚えていない。覚えていることは学生時代に買ったというおぼろげな記憶である。買った当時も試験や卒業研究などで役に立ったはずはない。しかし何かその時も縁があったのだろう。ところがなぜか今の方が縁がある。
私は幾度となく研究の対象を転向させてきた。数年前に再度転向したのが昆虫の共生菌である。昆虫の共生菌について始めた時、そういえばと書棚から取り出してきたのがこの本であった。
この本は「細胞内共生」という本の題名の通り細胞内で共生している、あるいは共生していると考えられている微生物について書かれた本である。生物の共生についてはミトコンドリアや葉緑体をはじめ根粒バクテリアなどについて授業などでよく聞かれていることと思う。これら以外にも授業ではあまり出て来ない昆虫の共生菌についても詳しく書かれている。内容的には古くなった部分もあると思われるが、細胞内共生について書かれた分かりやすい本である。
実はこの本の主題は昆虫の共生菌、中でもアブラムシの共生菌について著者の研究の紹介である。実際、著者は本文中で「本書の執筆を引き受けたのも、元はといえばアブラムシのことが書きたかったからに他ならない。」(65ページ)と、普通であれば「まえがき」や「あとがき」にでも書くようなものを本文中に書いている。著者の研究の一端が垣間見られ、改めて読み返すと自分はまだまだこの分野では若輩者であると痛切に感じることは当然のことであるが、それ以上に著者の思い入れが強く伝わってきて励みとなる。
細胞内共生について興味を持った方には入門書としてお薦めしたい。

宮本 葵 先生 / 薬品分析学研究室

「新幹線ガール」徳渕真利子著 メディアファクトリー
普段、便利に利用する日本が世界に誇る新幹線。乗車中に、いつも楽しみにしているのが車内販売での珈琲やアイスクリームの購入である。ワゴンをたくみに操るお姉さんは、「パーサー」と呼ばれるそうである。簡単なようで、この仕事はなかなか厳しく奥が深い。男性パーサーもいるようだが、やはり女性の仕事のようだ。この本は、その仕事でアルバイト一年、社員となってわずか四か月で、約三百人いる社員パーサーの中で売上高の一位に輝いた東海道新幹線の女性パーサーの手記である。同性としては、なんとも頼もしい限りで、一体何者だろうと感じたのが本書を手に取ったきっかけである。個人の平均売上高の三倍という数字を売り上げながら、なぜそうなったのか本人にはその理由が分からない。そもそも売り上げ自体に全く無関心だったというから、何とも愉快で小気味いい。
研修の内容や職業に対する考え方についての記述は、立場を超えて多くの洞察を与えてくれる。実務への心構えや、仕事に取り組む姿勢など、うるさく感じてしまう事柄もさらりとうまく表現している。乗客との接点を楽しむ職業なだけに、コミュニケーションの極意や適性についても触れられている。随所に散りばめられたお客様に対する心遣いは、薬剤師を目指す学生にとって参考になる内容である。また、運行に関する専門的な内容にも軽く触れ、にわか仕立ての鉄道マニアになった気分にもさせてくれる。
文章の構成はしっかりとしながらもシンプルである。短時間で気楽に読め、読み味さっぱりの清涼感に包まれるので、手に取ってパラパラとやっていると元気が出てくる気がする一冊である。本書に触れてから、新幹線を利用するごとにパーサーの名札チェックに余念が無くなった。いつか車内で御本人からサービスを受けられる時が来ることを、楽しみにしている。
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