図書館運営委員からのこの一冊 2012年度
図書館では、図書館運営委員による推薦図書リストを作成しました。 図書は、2階カウンター前の「図書館運営委員からのこの一冊コーナー」に並んでいますので、是非手に取ってみてください。貸出も可能です。
※2013年12月以降、3階・4階閲覧室へ移動しました。
請求記号を元に探してください。不明な場合はカウンターまでお尋ねください。
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山崎 良介 先生 / ドイツ語研究室
「失敗学のすすめ」畑村洋太郎著 講談社
畑村洋太郎氏は、失敗から教訓を学ぶ「失敗学」を提唱されています。政府「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」委員長を務め、2012年7月23日、日本記者クラブにおいて膨大な調査資料に基づいた報告をされました。
「失敗は成功のもと」「失敗は成功の母」という名言があります。「失敗」という言葉は、『広辞苑』によると「やってみたが、うまくいかないこと。しそこなうこと。やりそこない。しくじり。」です。
「失敗学」とは、失敗の特性を理解し、不必要な失敗を繰り返さないとともに、失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぶことです。そしてその失敗を新たな創造というプラス方向に転じさせて活用しようというのが「失敗学」の到達目標です。
「失敗はマイナス面のみに目を向けられるが、プラス面を見ないのはおかしい。マイナス面のみの見方こそが失敗を繰り返させ、また失敗を増長させて大事故を起こす」ことが強調されています。
目次を見ると、プロローグ、失敗に学ぶ 第1章、失敗とは何か 第2章、失敗の種類と特徴 第3章、失敗情報の伝わり方・伝え方 第4章、全体を理解する 第5章、失敗こそが創造を生む 第6章、失敗を立体的にとらえる 第7章、致命的な失敗をなくす 第8章、失敗を生かすシステムづくり エピローグ となっています。記憶に新しい様々な事故が実例をあげて検証されており、さらなる失敗をしないよう警鐘を鳴らしています。失敗自体は悪いことではなく、その経験の中で自分が見たこと、感じたこと、考えたことは必ず次に役立ち、その半面、失敗を恐れてまた失敗に懲りて挑戦自体をやめてしまうことが、一番まずいことだと指摘しています。
これからの勉学生活にお薦めしたい1冊です。
畑村洋太郎氏は、失敗から教訓を学ぶ「失敗学」を提唱されています。政府「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」委員長を務め、2012年7月23日、日本記者クラブにおいて膨大な調査資料に基づいた報告をされました。
「失敗は成功のもと」「失敗は成功の母」という名言があります。「失敗」という言葉は、『広辞苑』によると「やってみたが、うまくいかないこと。しそこなうこと。やりそこない。しくじり。」です。
「失敗学」とは、失敗の特性を理解し、不必要な失敗を繰り返さないとともに、失敗からその人を成長させる新たな知識を学ぶことです。そしてその失敗を新たな創造というプラス方向に転じさせて活用しようというのが「失敗学」の到達目標です。
「失敗はマイナス面のみに目を向けられるが、プラス面を見ないのはおかしい。マイナス面のみの見方こそが失敗を繰り返させ、また失敗を増長させて大事故を起こす」ことが強調されています。
目次を見ると、プロローグ、失敗に学ぶ 第1章、失敗とは何か 第2章、失敗の種類と特徴 第3章、失敗情報の伝わり方・伝え方 第4章、全体を理解する 第5章、失敗こそが創造を生む 第6章、失敗を立体的にとらえる 第7章、致命的な失敗をなくす 第8章、失敗を生かすシステムづくり エピローグ となっています。記憶に新しい様々な事故が実例をあげて検証されており、さらなる失敗をしないよう警鐘を鳴らしています。失敗自体は悪いことではなく、その経験の中で自分が見たこと、感じたこと、考えたことは必ず次に役立ち、その半面、失敗を恐れてまた失敗に懲りて挑戦自体をやめてしまうことが、一番まずいことだと指摘しています。
これからの勉学生活にお薦めしたい1冊です。
立川 眞理子 先生 / 環境衛生学研究室
「柳橋物語」山本周五郎著 角川春樹事務所
修行に出る幼馴染からの突然の告白から始まった恋。それに応えるために懸命に生きる少女おもん。苦しさや悲しみの果てに真実の愛をみつける。火事や大水に翻弄されながらも心を寄せて暮らす江戸の人々が背景となり、現在の日本とつながる。懸命に生きることへの愛おしさがつのる。正確で流れるような文章に読書の努力は要らない。
修行に出る幼馴染からの突然の告白から始まった恋。それに応えるために懸命に生きる少女おもん。苦しさや悲しみの果てに真実の愛をみつける。火事や大水に翻弄されながらも心を寄せて暮らす江戸の人々が背景となり、現在の日本とつながる。懸命に生きることへの愛おしさがつのる。正確で流れるような文章に読書の努力は要らない。
松原 茂 先生 / 健康・スポーツ科学研究室
「スポーツオノマトペ なぜ一流選手は「声」を出すのか」藤野良孝著 小学館
皆さんは世界で活躍する一流のスポーツ選手の中に、よくプレー中に「声」を発している選手を目の当りにしていることと思います。実は日本の選手はこの「声」を発する選手が外国の選手よりも大変少ないのです。それでも卓球でお馴染みの福原 愛選手が「サーッ!」というように、あるいはハンマー投げで大活躍の室伏広治選手は「ンッガアァァァー!」というような声をしばしば耳にしていることでしょう。このようなスポーツの場で叫ばれる「声」には、実は大きな意味や役割があります。この本の著者である藤野良孝氏は、スポーツ時における選手の発する擬音語や擬態語的な「音」や「声」を“スポーツオノマトペ”と名付けました。福原選手の「サーッ!」は、やる気と気合を引き出し相手に威圧感を与える「魔力」として、室伏選手の「ンッガーアァァァー!」は最高のパフォーマンスを発揮させるために「威力」を引き出す手段としての“スポーツオノマトペ”なのです。このようにトップアスリートが「声」を出す理由には、試合中にタイミングよく“スポーツオノマトペ”を発することで、パフォーマンスの向上と成績アップの効果が見られることの魅力を誰よりも知っているからなのです。この書は、トップアスリートへの取材やアンケート、報道の場でのコメントなどに基ずいて、“スポーツオノマトペ”が運動パフォーマンスの調整・持続などに効果を発揮する運動制御機能についての影響を中心に解説がなされています。スポーツ選手やスポーツファンの皆さんがこの書を読み終えた後には、実際にプレーをしている時、あるいは観戦している時に今までとは違った観方でスポーツを楽しめるものとなるでしょう。スポーツを愛好している人へのお薦めの一冊です。ぜひご一読下さい!
皆さんは世界で活躍する一流のスポーツ選手の中に、よくプレー中に「声」を発している選手を目の当りにしていることと思います。実は日本の選手はこの「声」を発する選手が外国の選手よりも大変少ないのです。それでも卓球でお馴染みの福原 愛選手が「サーッ!」というように、あるいはハンマー投げで大活躍の室伏広治選手は「ンッガアァァァー!」というような声をしばしば耳にしていることでしょう。このようなスポーツの場で叫ばれる「声」には、実は大きな意味や役割があります。この本の著者である藤野良孝氏は、スポーツ時における選手の発する擬音語や擬態語的な「音」や「声」を“スポーツオノマトペ”と名付けました。福原選手の「サーッ!」は、やる気と気合を引き出し相手に威圧感を与える「魔力」として、室伏選手の「ンッガーアァァァー!」は最高のパフォーマンスを発揮させるために「威力」を引き出す手段としての“スポーツオノマトペ”なのです。このようにトップアスリートが「声」を出す理由には、試合中にタイミングよく“スポーツオノマトペ”を発することで、パフォーマンスの向上と成績アップの効果が見られることの魅力を誰よりも知っているからなのです。この書は、トップアスリートへの取材やアンケート、報道の場でのコメントなどに基ずいて、“スポーツオノマトペ”が運動パフォーマンスの調整・持続などに効果を発揮する運動制御機能についての影響を中心に解説がなされています。スポーツ選手やスポーツファンの皆さんがこの書を読み終えた後には、実際にプレーをしている時、あるいは観戦している時に今までとは違った観方でスポーツを楽しめるものとなるでしょう。スポーツを愛好している人へのお薦めの一冊です。ぜひご一読下さい!
小林 宏司 先生 / 物理学研究室
「菊川怜の数学生活のススメ」菊川怜著 日本文芸社
この本は暮らしの中で使う数学を論理的に解釈し、途中の過程を詳しく解説することで、読者の発想の転換と計算力を養うことを目標にしている。この頃の学生さんは、携帯電話をはじめとする電子機器の氾濫とゲームソフト等のアプリケーションの蔓延により思考が簡略化そして画一化される傾向が強く、文章を書く能力だけではなく読む能力も極端に落ちている。加えて発想力・論理力・計算力といった大学生として必要な要素も欠落ぎみであるため、講義で問題を提起すると途中の過程を無視して解答のみを追い求める学生さんの姿をよく見かける。この本では問題を解くという行為は途中過程がいかに重要であるかを示しているので、一読の価値がある。また、学生さんが年度初めに時間割を組む際に「省エネ」という言葉を良く使うが、本来の意味を取り違えているようだ。省エネとは、人類の英知と技術の粋を駆使して開発した製品を完成させた暁に無駄が無いかを考える始めることであり、開発途上で出来る行為ではない。薬学部の勉強に例えるなら、「省エネ」とは国家試験に合格した者にのみ許される行為であり、勉強の途上では許されない。この点においてもこの本では、解答を導くうえで必要となる基礎的な数学の知識を省くことなく解説することで読み易く構成されている。この本は学習への取り組み方を教えてくれる大変役立つ一冊である。
この本は暮らしの中で使う数学を論理的に解釈し、途中の過程を詳しく解説することで、読者の発想の転換と計算力を養うことを目標にしている。この頃の学生さんは、携帯電話をはじめとする電子機器の氾濫とゲームソフト等のアプリケーションの蔓延により思考が簡略化そして画一化される傾向が強く、文章を書く能力だけではなく読む能力も極端に落ちている。加えて発想力・論理力・計算力といった大学生として必要な要素も欠落ぎみであるため、講義で問題を提起すると途中の過程を無視して解答のみを追い求める学生さんの姿をよく見かける。この本では問題を解くという行為は途中過程がいかに重要であるかを示しているので、一読の価値がある。また、学生さんが年度初めに時間割を組む際に「省エネ」という言葉を良く使うが、本来の意味を取り違えているようだ。省エネとは、人類の英知と技術の粋を駆使して開発した製品を完成させた暁に無駄が無いかを考える始めることであり、開発途上で出来る行為ではない。薬学部の勉強に例えるなら、「省エネ」とは国家試験に合格した者にのみ許される行為であり、勉強の途上では許されない。この点においてもこの本では、解答を導くうえで必要となる基礎的な数学の知識を省くことなく解説することで読み易く構成されている。この本は学習への取り組み方を教えてくれる大変役立つ一冊である。
道祖土 勝彦 先生 / 基礎薬学系道祖土研究室
「ガリア戦記」カエサル著、近山金次訳 岩波書店
『ガリア戦記』(ガリアせんき、ラテン語: Commentarii de Bello Gallico)は、共和政ローマ期の政治家・軍人のガイウス・ユリウス・カエサルが自らの手で書き記した、ガリア戦争(現在のフランス・ドイツ地域)の遠征記録。
指揮官カエサル自ら遠征先のテントの中でが書いた本書は、もともとは元老院への戦況報告の体裁を取っていたと考えられている。このため、文中で自分自身の表現には「カエサル」もしくは三人称で書かれていることが特徴です。カエサル(シーザー)はローマに帝政を導入しますが、「賽は投げられた」、「来た、見た、勝った」など簡潔な表現を利用しているにも拘わらず、兵隊(人)の掌握は完ぺきであり、客観的な現状分析による判断法の構築は現代社会において大変参考になるかと思います。
『ガリア戦記』(ガリアせんき、ラテン語: Commentarii de Bello Gallico)は、共和政ローマ期の政治家・軍人のガイウス・ユリウス・カエサルが自らの手で書き記した、ガリア戦争(現在のフランス・ドイツ地域)の遠征記録。
指揮官カエサル自ら遠征先のテントの中でが書いた本書は、もともとは元老院への戦況報告の体裁を取っていたと考えられている。このため、文中で自分自身の表現には「カエサル」もしくは三人称で書かれていることが特徴です。カエサル(シーザー)はローマに帝政を導入しますが、「賽は投げられた」、「来た、見た、勝った」など簡潔な表現を利用しているにも拘わらず、兵隊(人)の掌握は完ぺきであり、客観的な現状分析による判断法の構築は現代社会において大変参考になるかと思います。
丹羽 典朗 先生 / 数学研究室
「とんでもなく役に立つ数学」西成活裕著 朝日出版社
本の紹介を依頼されたのであるが、この場で数学の専門書を紹介しても誰も読まないであろう。かと言って、数学に関係しない 本を紹介するのは自分らしくない…。あっ、この書き出しは去年使ったな…。
今回紹介するのは、東京大学教授である西成活裕氏の『とんでもなく役に立つ数学』(朝日出版社)です。少し前、テレビに出演していたりしたのでご存知の方もいるでしょう。どのような条件が成り立つと渋滞が発生するか(渋滞学)を考えている先生です。
1章のタイトルがいい。『いつもポケットに、難問を』。大学院生の時、ある数学の先生に『ポケットに数学を』と言われた事を思い出しました。ただし、ここで書いている”難問”や”数学”というのは、問題集などに載っている”問題”を指すのではありません。自分自身で見つけた問題や、まだ解決されていない(であろう)問題を意味します。それをいつもポケットに入れて持ち歩こう、いつでも考えられるようにしておこう、という事です。そのように考え続けていると、お風呂で髪を洗っている時やウォーキングをしている時に、ふと解決の糸口が見つかるかもしれません。これは数学に限った話ではなく、すべての物事に当てはまる事だと思います。
3章のインクジェットプリンターの話が身近な話題でいい。私の研究室にもキヤ○ン製のインクジェットプリンターがあるのですが、印刷の際、机が左右に揺れるという欠点があります。印字ヘッドにインクタンクという重い部品が付いているからです。エ○ソン製も同じ構造をしているので、同じ欠点を持っているはずです。一方、ブ○ザー製のプリンターはインクタンクを印字ヘッドではなく本体に付けているので、その欠点が取り除かれているのですが、印字ヘッドにインクを供給するチューブが暴れるという問題があったそうです。それを西成研究室が数学(ソリトン理論)を使って解決したとの事。さすがに、どのように解決したかを具体的に書いてはいませんが、雰囲気は伝わってきます。
最後になりましたが、3章の『セルオートマトン』や4章の東京マラソンの『…スムーズにスタートさせられる?』のところは、ぜひ自分でも計算してみて下さい。
本の紹介を依頼されたのであるが、この場で数学の専門書を紹介しても誰も読まないであろう。かと言って、数学に関係しない 本を紹介するのは自分らしくない…。あっ、この書き出しは去年使ったな…。
今回紹介するのは、東京大学教授である西成活裕氏の『とんでもなく役に立つ数学』(朝日出版社)です。少し前、テレビに出演していたりしたのでご存知の方もいるでしょう。どのような条件が成り立つと渋滞が発生するか(渋滞学)を考えている先生です。
1章のタイトルがいい。『いつもポケットに、難問を』。大学院生の時、ある数学の先生に『ポケットに数学を』と言われた事を思い出しました。ただし、ここで書いている”難問”や”数学”というのは、問題集などに載っている”問題”を指すのではありません。自分自身で見つけた問題や、まだ解決されていない(であろう)問題を意味します。それをいつもポケットに入れて持ち歩こう、いつでも考えられるようにしておこう、という事です。そのように考え続けていると、お風呂で髪を洗っている時やウォーキングをしている時に、ふと解決の糸口が見つかるかもしれません。これは数学に限った話ではなく、すべての物事に当てはまる事だと思います。
3章のインクジェットプリンターの話が身近な話題でいい。私の研究室にもキヤ○ン製のインクジェットプリンターがあるのですが、印刷の際、机が左右に揺れるという欠点があります。印字ヘッドにインクタンクという重い部品が付いているからです。エ○ソン製も同じ構造をしているので、同じ欠点を持っているはずです。一方、ブ○ザー製のプリンターはインクタンクを印字ヘッドではなく本体に付けているので、その欠点が取り除かれているのですが、印字ヘッドにインクを供給するチューブが暴れるという問題があったそうです。それを西成研究室が数学(ソリトン理論)を使って解決したとの事。さすがに、どのように解決したかを具体的に書いてはいませんが、雰囲気は伝わってきます。
最後になりましたが、3章の『セルオートマトン』や4章の東京マラソンの『…スムーズにスタートさせられる?』のところは、ぜひ自分でも計算してみて下さい。
三宅 宗晴 先生 / 有機化学研究室
「はじめて学ぶ大学の有機化学」深澤義正、笛吹修治著 化学同人
近年、高校生におけるいわゆる「理科ばなれ」が進行し、理科教育が大きな社会問題となっている。「高校の化学」と「大学の化学」とのギャップを埋めることができずに、大学入学時における理科再教育をおこなう大学も出てきているのが現状である。薬学においては、有機化学は基礎学問の代表であり、医薬品にたずさわる者としてかなり高度な化学を習得することが必須となっている。なぜならば、医薬品、人体は有機物から構成されているからである。大学における有機化学の講義では、膨大な数の化学反応がでてくることから、単なる暗記しなければならないと考えがちになっているようである。しかしながら、有機化学は暗記科目ではなく、基本的概念さえ理解してしまえば暗記にたよることなく、むしろ理解しやすい学問といえる。本書は有機化学を理解する上で必要とされる基本原理が解説されており、高校化学からのすみやかな移行ができるように書かれている。また、章末問題もあり、ていねいな解説も設けられている。有機化学のテキストといえば通常分厚いのが常であるが、それに比べ、本書は170項というハンデイである。これは苦手意識のある学生にとっては大きな利点である。「なぜそうなるのか」という学生の疑問に答えるように構成されているのが特徴であり、本書のタイトルどおり、大学ではじめて学ぶ有機化学にふさわしい内容となっている。
近年、高校生におけるいわゆる「理科ばなれ」が進行し、理科教育が大きな社会問題となっている。「高校の化学」と「大学の化学」とのギャップを埋めることができずに、大学入学時における理科再教育をおこなう大学も出てきているのが現状である。薬学においては、有機化学は基礎学問の代表であり、医薬品にたずさわる者としてかなり高度な化学を習得することが必須となっている。なぜならば、医薬品、人体は有機物から構成されているからである。大学における有機化学の講義では、膨大な数の化学反応がでてくることから、単なる暗記しなければならないと考えがちになっているようである。しかしながら、有機化学は暗記科目ではなく、基本的概念さえ理解してしまえば暗記にたよることなく、むしろ理解しやすい学問といえる。本書は有機化学を理解する上で必要とされる基本原理が解説されており、高校化学からのすみやかな移行ができるように書かれている。また、章末問題もあり、ていねいな解説も設けられている。有機化学のテキストといえば通常分厚いのが常であるが、それに比べ、本書は170項というハンデイである。これは苦手意識のある学生にとっては大きな利点である。「なぜそうなるのか」という学生の疑問に答えるように構成されているのが特徴であり、本書のタイトルどおり、大学ではじめて学ぶ有機化学にふさわしい内容となっている。
荒川 基記 先生 / 医薬品評価科学研究室
「イヤーノート 2013 内科・外科編」岡庭豊、荒瀬康司、三角和雄編集 MEDIC MEDIA
本書は、医師国家試験対策用の本として医学生の中では知らない人はいないという有名な本で、実際に医師になってからも一般臨床医家の基礎知識集として利用できるよう構成されている。薬学生が病院実習・薬局実習でお世話になる、また現場の薬剤師が仕事をする上で必須の「今日の治療薬」や「治療薬マニュアル」と同様、毎年更新され、各種疾患のガイドラインを含むあらゆる情報が常に最新にアップデートされている。また、この一冊で内科・外科のほとんどをカバーできるため、チーム医療を担う薬剤師など様々な医療従事者に対する共通の書としても、効果的な活用ができるよう内容向上を目指し制作されている。薬剤師国家試験の参考書のような分野毎に分冊にはなっておらず、この1冊に全てが詰まっている。そのため、調べたいときにパッと引ける携帯辞書的な使い方もできる。ポイントを絞って必要最低限かつ充分な知識量をコンパクトにまとめた効率・コストパフォーマンスに優れる一冊である。
薬学の勉強をしていると薬効群から薬を考えてしまいがちになるが、実際は疾患から薬物治療を考えなくてはならない。また薬物だけで疾患を治療しているわけではなく、手術や検査、処置と組み合わせて行われているため、薬物療法が疾患の治療においてどの様な役割を担っているのかを理解する必要がある。イヤーノートは疾患の基本的な知識、診断から治療への流れ、注意点等がコンパクトにまとめられており、対象となる疾患について先ずは必要最低限必要な知識を把握したいといった用途に最適である。
イヤーノートには膨大な情報量があるだけに便利な一冊であるが、一つ一つの疾患について詳細に記載がされているわけではなく、肝心な薬物療法については薬学生・薬剤師にとっては情報が完全に足りないため、この一冊で全てを済ますのでなく今まで使ってきた教科書やノート、他の成書とあわせてうまく使いこなして欲しい。
本書は、医師国家試験対策用の本として医学生の中では知らない人はいないという有名な本で、実際に医師になってからも一般臨床医家の基礎知識集として利用できるよう構成されている。薬学生が病院実習・薬局実習でお世話になる、また現場の薬剤師が仕事をする上で必須の「今日の治療薬」や「治療薬マニュアル」と同様、毎年更新され、各種疾患のガイドラインを含むあらゆる情報が常に最新にアップデートされている。また、この一冊で内科・外科のほとんどをカバーできるため、チーム医療を担う薬剤師など様々な医療従事者に対する共通の書としても、効果的な活用ができるよう内容向上を目指し制作されている。薬剤師国家試験の参考書のような分野毎に分冊にはなっておらず、この1冊に全てが詰まっている。そのため、調べたいときにパッと引ける携帯辞書的な使い方もできる。ポイントを絞って必要最低限かつ充分な知識量をコンパクトにまとめた効率・コストパフォーマンスに優れる一冊である。
薬学の勉強をしていると薬効群から薬を考えてしまいがちになるが、実際は疾患から薬物治療を考えなくてはならない。また薬物だけで疾患を治療しているわけではなく、手術や検査、処置と組み合わせて行われているため、薬物療法が疾患の治療においてどの様な役割を担っているのかを理解する必要がある。イヤーノートは疾患の基本的な知識、診断から治療への流れ、注意点等がコンパクトにまとめられており、対象となる疾患について先ずは必要最低限必要な知識を把握したいといった用途に最適である。
イヤーノートには膨大な情報量があるだけに便利な一冊であるが、一つ一つの疾患について詳細に記載がされているわけではなく、肝心な薬物療法については薬学生・薬剤師にとっては情報が完全に足りないため、この一冊で全てを済ますのでなく今まで使ってきた教科書やノート、他の成書とあわせてうまく使いこなして欲しい。
和田 平 先生 / 健康衛生学研究室
「博士号とる?とらない?徹底大検証!」白楽ロックビル著 羊土社
将来の事を考えるときに、病院や調剤薬局等へ就職情報に比べて、研究職に関する情報が不足しているように思われる。そこで、研究者を目指したい学生に、ぜひ本書の一読をお勧めします。本書は、生物工学(バイオ)系の研究者を目指す学部生•大学院生のために、月刊誌「実験医学」に連載シリーズに大幅な加筆を施した本であり、研究者を取り巻く社会環境と現状が詳細に概説されている。まず第1章において、大学院博士課程に進学について読者からの手紙の紹介を交えて大学院への進学の現状と実態について記載されている。その中で著者は、博士号がなぜ研究者になるために必要であるかという問いに対して、日本でも世界でも、研究者を目指すためには「博士号は研究者としての資格」であると結論を述べている。つまり、博士課程に進学して博士号を取得がゴールではなく、そこが研究者生活のスタートラインなのである。第2章では、博士号取得への道について、大学卒業後にそのまま博士課程に進学するケースから企業研究者の博士号の取り方についてまで幅広くかつ詳細に概説されている。そして最後の第3章では、多くの学生が不安に思う「博士号取得後の企業ならびに国公立研究所の研究員、大学等研究機関および国内外のポスドク(博士号を取得した後の任期付研究員)への道はどうなっているのか?」について、各職種で働かれている研究者ののインタビューを交えて、仕事内容、魅力そして苦悩などが解説されている。本書は研究者を目指す生活の真実•現実のデータを示しつつ、著者の思いをこめながら、バイオ系の学部生•大学院生•若手研究者が「どう生きるといいのか」が示されている。本書が学生の研究者を目指す動機の一助となり、本学部から次代を担う数多くの研究者が輩出されることを願っている。
将来の事を考えるときに、病院や調剤薬局等へ就職情報に比べて、研究職に関する情報が不足しているように思われる。そこで、研究者を目指したい学生に、ぜひ本書の一読をお勧めします。本書は、生物工学(バイオ)系の研究者を目指す学部生•大学院生のために、月刊誌「実験医学」に連載シリーズに大幅な加筆を施した本であり、研究者を取り巻く社会環境と現状が詳細に概説されている。まず第1章において、大学院博士課程に進学について読者からの手紙の紹介を交えて大学院への進学の現状と実態について記載されている。その中で著者は、博士号がなぜ研究者になるために必要であるかという問いに対して、日本でも世界でも、研究者を目指すためには「博士号は研究者としての資格」であると結論を述べている。つまり、博士課程に進学して博士号を取得がゴールではなく、そこが研究者生活のスタートラインなのである。第2章では、博士号取得への道について、大学卒業後にそのまま博士課程に進学するケースから企業研究者の博士号の取り方についてまで幅広くかつ詳細に概説されている。そして最後の第3章では、多くの学生が不安に思う「博士号取得後の企業ならびに国公立研究所の研究員、大学等研究機関および国内外のポスドク(博士号を取得した後の任期付研究員)への道はどうなっているのか?」について、各職種で働かれている研究者ののインタビューを交えて、仕事内容、魅力そして苦悩などが解説されている。本書は研究者を目指す生活の真実•現実のデータを示しつつ、著者の思いをこめながら、バイオ系の学部生•大学院生•若手研究者が「どう生きるといいのか」が示されている。本書が学生の研究者を目指す動機の一助となり、本学部から次代を担う数多くの研究者が輩出されることを願っている。