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研究・社会貢献

科研費 CaseStudy 1


てんかん欠神発作と脳障害

薬理学ユニット 石毛久美子

欠神発作に伴う脳細胞障害のメカニズムを明らかに

てんかんは、世界保健機構(WHO)編纂によるてんかん辞典では「種々の病因によってもたらされる慢性の脳疾患で、大脳の神経の過剰な発射から由来する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、様々な臨床ならびに検査所見の表出を伴う。」と定義される脳の神経の病気の一つです。
てんかんは、いろいろな神経疾患の中でも罹患率の高い疾患で、我が国では約0.5%の有病率と考えられています。
定義にあるように、てんかんは、様々な症状を示しますが、現在は国際抗てんかん連盟によって提唱された国際分類に基づいて分類され、発作の種類により治療薬も異なっています。私達の研究対象である「欠神発作」は、ほとんどが小児期に発症し、棘徐波複合と呼ばれる特徴的な脳波が観察され、行動停止、意識消失等が起こりますが、けいれんは起こしません。欠神発作は、視床−大脳皮質神経回路の異常によって起こると考えられています(図1)が、発作によって細胞にどのような変化が起こるのかは不明な点も多く残されています。

図1. 視床 - 大脳皮質経路
回路のどこかに興奮が伝えらえると視床網様核(TC)にGABAが放出される(矢印赤)。
TCにはGABAAおよびGABAB受容体が存在し、過分極を起こすが、その結果、低闘値Ca2+チャネル(T-Ca2+)が活性化し、この回路はさらに興奮することになる。
さて、近年、酸化的ストレスまたは小胞体ストレスと呼ばれる細胞に障害を起こす経路について多くの研究が行われ、いろいろなことがわかってきました。また、これらのストレスといろいろな中枢神経疾患との関連も数多く検討されています。
しかし、てんかん発作とこれらのストレスとの関連に着目した研究報告は少なく、欠神発作に関しては全くないといっても過言ではありません。
一方で、てんかん患者は、知能障害をはじめてんかん以外の何らかの障害を持っていることが少なくないことも報告されています。これに関しては、抗てんかん薬の副作用も含めて、てんかんと直接関連するものか否かというところから慎重に判断しなければなりませんが、発作に伴って酸化的ストレスまたは小胞体ストレスが負荷されていることも十分に考えられます。
そこで、現在、科学研究費補助金の援助(平成18〜19年度:てんかん欠神発作における酸化的および小胞体ストレス関連因子の変動とその意義)の下、欠神発作に伴う脳細胞障害のメカニズムを明らかにするため、モデルマウスにおいて、どのような障害を受けているか、また、酸化的ストレスおよび小胞体ストレス関連タンパク質に変動が見られるのかなどを中心に研究を行っています。

図2. モデルマウスと脳波
発作が起こるとマウスの行動は停止欠神し、大脳皮質表面で測定した脳波には棘徐波複合(下線部)が認められる。
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