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研究・社会貢献

科研費 CaseStudy27


抗原・アジュバント複合化ナノ粒子を用いた経皮ワクチンシステムの開発

薬品物理化学研究室 教授 藤井まき子

注射しないワクチン

感染症の予防にはワクチン投与が重要です。ワクチンは「予防注射」と呼ばれるように、ほとんど注射で投与します。注射は、確実に体内に入れることができますが、痛みを伴うだけでなく、どこでも、だれでもが投与できるものではなく、また、無菌製剤であるため、制限が大きいことが問題です。簡単に、だれでも安全に使えるワクチンとして、皮膚にワクチンとなるタンパクを塗擦し、免疫を獲得させる方法を検討します。

皮膚の構造と機能

皮膚は身体を外界から守る働きを持っています。皮膚の最外層にある角層は、煉瓦とモルタルに例えられる角化した細胞とその間を埋める細胞間脂質から構成され、皮膚に触れた物質が体内に簡単には入らないように物理的なバリアとなっています。細菌などが入ってしまったときには免疫細胞としてランゲルハンス細胞が働きます。
ワクチンに使われるタンパクは、分子量が大きく親水性が高いという角層を透過しにくい性質をもっていますが、角層を通過すれば、ランゲルハンス細胞が存在するので、免疫が成立する可能性があります。

経皮ワクチンの戦略

健康な角層にワクチンで使われるタンパクを通すのは困難です。そこで、皮膚付属器官の毛包に着目しました。毛包は皮膚を貫いて存在しますが、単なる空洞ではなく、表面に近い部分は角層に覆われており、それより深いところは毛の存在により物質が入り込む空隙はありません。そこで、ワクチンを適用する部分を脱毛しました。そこに水溶性高分子を適用すると、水溶液では深部にまでは入りませんが、ナノ粒子とともに塗擦すると毛包に入りやすいことがわかりました。また、脱毛という刺激があると、ランゲルハンス細胞が活性化することがわかりました。
ヘアレスマウス皮膚のランゲルハンス細胞

(a)無処置

(b)脱毛1時間後

ナノ粒子にモデル抗原として卵白アルブミンを吸着させてヘアレスマウス脱毛皮膚に適用したところ、抗体価が上昇する個体もありましたが、効果のない個体が多く、さらなる検討が必要と考えました。(平成24〜26年度 科研費 課題番号24590212)

そこで、より確実な免疫獲得のため、ナノ粒子と抗原に加えコレラトキシンのようなアジュバントを複合粒子化し免疫応答を増強させること、さらに複合粒子を毛包に入り込みやすい基剤と組み合わせることを検討していきます。

研究成果の社会への貢献

簡単に皮膚に塗擦するだけのワクチンが開発できれば、医療の恩恵を受けにくい発展途上国でもワクチン使用が広まり、感染症予防に貢献できます。また、国内における免疫療法などにも応用できる可能性があります。
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