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研究・社会貢献

科研費 CaseStudy36


「大規模レセプトデータベースを用いた脂質異常症における眼科疾患発生に関する疫学研究」

病院薬学研究室 准教授 大場延浩

薬の使用と副作用との関連

 何かの病気に罹ると治療の選択肢の1つとして、薬が投与されることがあります。薬は個々の患者さんに応じて、最も有効でかつ安全と考えられるものが使われます。しかし、稀に薬の使用後に副作用を発生する場合があります。薬の副作用には、主にType A(薬理作用が増強されたものと理解できる副作用)とType B(薬理作用からは説明されない反応)があります。特に、薬の使用と副作用との関連が良く知られていない場合には、多くの集団のなかで薬の使用と副作用の発生との関係を調べることが有効です。主にこのような事柄について研究するのが薬剤疫学の学問領域になります。この学問は人々の健康を維持し、疾病を治療するために使われる薬物の効果と安全性を評価することを使命としております。

大規模データベース(ビッグデータ)

 稀な副作用の発生と薬剤の使用との関連を検討するには、大規模レセプトデータベースの利用が有用です。欧米やアジアの一部の国々で実施される薬剤や医療機器による有効性や安全性を検討する薬剤疫学研究では、医療費の償還のためのレセプトデータが二次的に利用されることが多くなっています。近年、わが国でも厚生労働省は研究への利用のために、2011年より全国民のレセプトデータを匿名化し、厳しい利用条件の下で提供を開始しています。また、いくつかの企業は、レセプトデータを匿名化し商業用レセプトデータベースとして研究者等に提供しています。わが国において大規模レセプトデータベースを利用した薬の使用と副作用に関する薬剤疫学研究はまだ少なく、データに含まれる病名の情報が十分に検討されていないという問題もありますが、レセプトデータベースを用いて検討することで薬の安全性に関する評価が可能となるかも知れません。

脂質異常症と眼科疾患の発生について

 わが国における生活習慣病の患者数は増加しており、脂質異常症の患者さんも多く含まれています。脂質異常症による心血管疾患の予防のために薬が使われますが、その薬の使用と眼科疾患(白内障や緑内障)の発生との関連を示唆する報告があります。白内障や緑内障はいずれも失明の主な原因の1つとして知られており、失明は患者さんのQuality of Lifeを大きく低下する可能性があります。そこで、本研究では、レセプトデータベースに含まれる眼科疾患をどのように特定することが可能かについて検討し、この検討結果を用いて、レセプトデータベースを用いた薬の使用と眼科疾患の発生との関連を研究することを目的としています。このような実例は、薬の市販後にレセプトデータベースを用いた薬剤疫学研究の推進力の1つとなります。

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