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研究・社会貢献

科研費 CaseStudy42


「ストレス適応障害に関与するユビキチンリガーゼの同定とその制御による治療薬の開発」

薬理学 助教 宮岸寛子
近年、うつ病等の気分障害や不安障害などの精神疾患で医療機関を受診する患者数は大幅に増加しています。さらに、医療機関を受診していない患者も多くいると推測されており、精神疾患は、国民に広く関わる疾患です。ストレス性精神疾患は、日常生活に様々な支障をきたすことから、早急かつ適切な予防と治療が必要となりますが、その方策は未だ不十分です。また、既存のストレス性精神疾患治療薬の問題点としては、効果発現が遅発性であることや、有効性に個人差が認められることなどが挙げられます。この様な背景から、ストレス性精神疾患に対する新たな治療ターゲットやより有効性の高い薬物治療法の開発が切望されてます。
生体は、外界からのストレス刺激に適応し、恒常性を維持するための生理機構(ストレス適応機構)を有しており、この機構の減弱や破綻が様々なストレス性精神疾患の発症に関係していると考えられています。これまでに、私は、マウスに1時間の拘束ストレスを14日間慢性負荷することで、情動行動に異常が認められずストレスに対して適応したストレス適応モデルマウス(適応マウス)、ならびに4時間の拘束ストレスを14日間慢性負荷することで、情動行動に異常が認められストレス適応機構が破綻したストレス非適応モデルマウス(非適応マウス)を作り分けることに成功しております。

これらの背景より本採択研究では、ユビキチンリガーゼに着目してストレス適応機構の破綻に関与するメカニズムの解明を目的としました。生体内のタンパク質の分解機構の一つとして、ユビキチン・プロテアソーム系が知られており、生体の恒常性維持に重要な役割を担っています。ユビキチン化には、3つの酵素、ユビキチン活性化酵素E1、ユビキチン結合酵素E2、及びユビキチンリガーゼE3の3種の酵素が関与し、基質タンパク質にユビキチンが付加することで、ポリユビキチン鎖が形成され、ポリユビキチン鎖が付加したタンパク質はプロテアソームによって分解されることが知られています(図)。適応マウスの海馬では、ユビキチンリガーゼのひとつであるNedd4-2のリン酸化に変化はありませんでしたが、非適応マウスの海馬においては、Nedd4-2のリン酸化が減少することが明らかとなりました。したがって、ストレス適応機構の破綻には、海馬におけるNedd4-2のリン酸化の減少が関与することが示唆されました。今後、ユビキチンリガーゼに関して更なる検討を進めることが、ストレス性精神疾患に対する新たな薬物治療法の開発の一助になると考えられます。
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