科研費 CaseStudy43
若手アスリートに向けた健康教育アプリの教育効果に関する研究
地域医療薬学 助教 中島理恵
若手アスリートへの健康教育の必要性
一般人とは違い多くの禁止薬物が指定されているアスリートには、‘うっかりドーピング’(ドーピング目的でなかったにも関わらずうっかり禁止薬物を服用してしまうこと)の危険性が常に付きまといます。オリンピックや世界大会出場経験のあるトップアスリートには、所属している競技団体によるアンチ・ドーピング教育が行われることが多く、禁止薬物のみならずサプリメントの摂取といった栄養に関する知識を含めた健康教育が充実していますが、競技団体による教育支援を受けるレベルまで到達していない学生アスリートなど一般の若手アスリート(以下、若手アスリート)に対するアンチ・ドーピング教育の効果、および健康行動の実態はあまり知られていません。若手アスリートといえども、そのほとんどが本格的に競技に取り組んでおり、ドーピング検査の対象となる大会レベルにすぐに達してしまう可能性もあり、ドーピング対策は必須です。
我々が以前行った若手アスリートの健康行動を明らかにするための調査では、体調が悪くてもドーピングを恐れて医薬品を服用するのをためらう若手アスリートの存在が明らかになった一方、直近1年間に59%の若手アスリートが一般用医薬品を使用し、サプリメントや健康食品、栄養ドリンクに至っては、52~76%が一時的を含め使用していました。しかし、それらを使う前にドーピングに引っかかるかどうか調べると答えた者は15%であり、若手アスリートのドーピングの知識に対する意識の低さが明らかになりました。また、調べたと回答した若手アスリートの情報入手先として一番多かったのは、薬剤師といった専門家ではなくインターネットでした。
我々が以前行った若手アスリートの健康行動を明らかにするための調査では、体調が悪くてもドーピングを恐れて医薬品を服用するのをためらう若手アスリートの存在が明らかになった一方、直近1年間に59%の若手アスリートが一般用医薬品を使用し、サプリメントや健康食品、栄養ドリンクに至っては、52~76%が一時的を含め使用していました。しかし、それらを使う前にドーピングに引っかかるかどうか調べると答えた者は15%であり、若手アスリートのドーピングの知識に対する意識の低さが明らかになりました。また、調べたと回答した若手アスリートの情報入手先として一番多かったのは、薬剤師といった専門家ではなくインターネットでした。
教育教材の作成と教育効果の検討
上記のように、アスリートには独特の健康行動(若手アスリートは身体づくりのため、サプリメント摂取率が高い一方で、禁止薬物が規定されているため医薬品服用への抵抗感がある等)があることが明らかになりました。そこで本研究では、アンチ・ドーピング教育を受ける機会の少ない若手アスリートに対して、従来の禁止薬物の情報提供に留まらない包括的な健康教育を行うことを目的とし、健康教育教材の作成、および教材を用いた教育の効果を検討します。本研究で得られる結果は、将来のトップアスリート候補である若手アスリートの健全な身体づくりに必要な健康知識や行動の向上に貢献することが期待されます。
図1 若手アスリートの健康教育の必要性
図2 若手アスリートに向けた健康教育教材例