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研究・社会貢献
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平成14年度選定


向流クロマトグラフィーの高性能化と生理活性物質分離への応用


1. 研究の目的

向流クロマトグラフィー(Countercurrent Chromatography:CCC)は、互いに混ざり合わない二液相間での物質の分配を基礎とした分配クロマトグラフィーである。従って、固定相、移動相共に液体であるため、従来のカラムクロマトグラフィーの使用により変性あるいは充填剤に吸着してしまう物質の分離に有効である。CCCを達成するためには、液体である固定相を物質の分離場であるカラムに保持させると共に、物質分離のための固定相と移動相の攪拌、分相及び移動相の移動を効率よく行うための装置が必要である。本研究では、CCCの高性能化を目的として、新たに開発した装置を含む各種CCC装置の物質分離における物理的因子が分離に及ぼす影響と試料の性質に合わせた適切な二相溶媒の選択法を検討し、更に生理活性物質分離への応用を行った。平成14年度〜平成18年度の5年間にわたる共同研究では多くの成果が得られたが、本稿ではその一部を紹介する。

2. 得られた成果

(1) 小型交軸型CCC装置のタンパク質分離効率 1)

これまで開発されたCCC装置の中で最も分離効率が高いのは、テフロンチューブをコイル状に巻き付けて作製したカラム(コイル状カラム)が横に自転しながら更に横に公転(惑星運動)するJ型CCC装置である。この装置は有機溶媒−水系二相溶媒には有効であるが、タンパク質などの分離に利用される水性二相溶媒では固定相を十分に保持できないため、分離効率が低下する。この問題点を解決するために交軸型CCC装置が開発されたが、国産初の装置は、1993年に本学理工学部との共同研究により製作された。この装置はJ型CCC装置とは異なり、コイル状カラムが縦に自転しながら更に横に公転するため、水性二相溶媒のような界面張力の差の小さい二相溶媒の使用が可能である。

A.J型CCC

B.交軸型CCC

図1. 高速向流クロマトグラフ(HSCCC)の回転機構模式図
この装置を用いてコイルの種類やカラムの回転方向、移動相溶媒の流速などの物理的因子が分離に及ぼす影響を検討してきたが、その成果を踏まえて、新たに小型交軸型CCC装置を考案、製作した。そこで、本研究では、この小型交軸型CCC装置のタンパク質の分離効率を検討した。本装置は、4つのコイル状カラムが公転軸から一定の距離の位置に均等に配置され、隣り合うカラムどうしは互いに反対方向に自転するため、送液チューブをねじれが生じることなく配管でき、安定した高速回転が可能である。

A

B

図2. 小型交軸型CCC装置の回転ユニット(A)とギアユニット(B)
また、カラムの脱着も容易な上、卓上型でコンパクトな大きさであり、動力もモーターからベルトを用いず直接ギアで伝達させたため、その効率が向上した。タンパク質標準試料に分子量が互いに近いチトクロムc(分子量(M.W.)12,000)、ミオグロビン(M.W.17,800)、リゾチーム(M.W.14,400)、水性二相溶媒に12.5%(w/w)ポリエチレングリコール(PEG)1000/12.5%(w/w)リン酸水素二カリウム(K2HPO4)水溶液を用いて分離を検討した結果、上層、下層のいずれを移動相とした場合でも良好な分離が達成され、本装置が水性二相溶媒を用いたタンパク質分離に有用であることが証明された。

2. 小型交軸型CCC装置のカエル卵由来リボヌクレアーゼ(cSBL)精製への応用 2)

水性二相溶媒に16.0%(w/w) PEG1000/6.3%(w/w)K2HPO4-6.3%(w/w)KH2PO4水溶液(pH 6.6)を用いてカエル(Rana catesbeiana)卵由来のcSBLの精製を小型交軸型CCCにより行った。その結果、cSBLはSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)により単一バンドとして検出され、リボヌクレアーゼ活性も保持されていた。このことから、小型交軸型CCC装置は、酵素などの生理活性物質を失活させることなく高純度に精製できることがわかった。

3. 今後の可能性

CCCは充填剤を使用しないため、通常のカラムクロマトグラフィーの使用が難しい物質の分離・精製に有効である。今後、更に分離効率の高い装置の開発、より物質選択的な機能性二相溶媒の検討などを行うことにより、生体内高極性成分や両親媒性物質、天然生理活性物質の分離・精製に幅広く応用されることが期待される。

文献:
  1. K. Shinomiya, K. Yanagidaira and Y. Ito, J. Chromatogr. A, 1104, 245 – 255 (2006).
  2. K. Shinomiya, H. Kobayashi, N. Inokuchi, K. Kobayashi, H. Oshima, S. Kitanaka, K. Yanagidaira, H. Sasaki, M. Muto, M. Okano and Y. Ito, J. Chromatogr. A, 1151, 91- 98 (2007).
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