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研究・社会貢献
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平成16年度選定


酸化的および低酸素ストレスによる転写調節因子および遺伝子産物の変動とその意義
脳梗塞や心筋梗塞のような虚血性疾患においては、日常生活に支障を来すような障害を残すことが少なくないが、このような疾患による障害には虚血状態がもたらす「低酸素ストレス」とその後の血流再開により、過剰に産生される活性酸素種(ROS)がもたらす「酸化的ストレス」が関与することが明らかにされている。低酸素ストレスや酸化的ストレスは、細胞内のさまざまな情報伝達過程に影響を及ぼし、細胞死を誘発し、機能障害を引き起こすと考えられる。

図1. 虚血 - 再灌流障害には活性酸素が関与する

すなわち、これらのストレスの影響は、遺伝子レベルにまで及ぶと考えられるが、その詳細な変化やメカニズムには不明な点が多く残されている。そこで、低酸素ストレスと酸化的ストレスの細胞内情報伝達系−特に、種々の転写調節因子や関連遺伝子に及ぼす影響の総合的な検討、および、両ストレスが関与する諸種の病態に有効な保護因子の探索を目的として、平成16年度より学内メンバー5名にDJ-1発見メンバーの一人である山梨大学・平敬宏教授(共同研究開始時は北海道大学所属)を加えた6名で5年間、共同研究を行った。
研究期間の前半では、培養細胞から病態モデル動物まで、いろいろな実験モデルを用いて酸化的ストレスや低酸素ストレスがNF-κBなどの転写調節因子やその関連因子にどのような影響を及ぼすかを調べ、酸化的ストレスによる細胞死誘発機構、脂肪細胞分化機構および低酸素時における骨格筋のエネルギー代謝機構の一端を明らかにした。また、すでに抗酸化作用が示唆されていたメタロチオネインの作用についても検討し、予後不良な運動ニューロン疾患で発症に酸化的ストレスの関与も示唆されている筋萎縮性側索硬化症(ALS)のモデル動物では、メタロチオネインによりALSの発症もしくは進行が調節されていることを示唆した。
これらの検討に並行して、研究開始時より、脳虚血−再灌流障害の実験モデルとして、培養細胞を低酸素状態にした後、通常の酸素状態にすることで細胞死を誘導するモデルとマウスの脳血流を一過性に遮断後、血流を再開させ、脳障害を誘導するモデルの作成を試み、両モデル確立後は、保護因子を探索した。

図2. モデルマウスにおける海馬 CA1 領域神経細胞障害

図2に海馬を中心とした脳切片の顕微鏡写真を示したが、虚血処置を行ったマウスでは海馬CA1領域の神経細胞が正常な状態(Shamマウス)と異なっていることがわかる。このように、モデルマウスでは、海馬神経細胞が選択的に障害されるモデルが確立できた。脳は、虚血に脆弱な組織であるが、中でも海馬は、特に脆弱な部位とされている。また、海馬は、記憶・学習に重要な役割を演ずる部位であることから、海馬の障害は認知障害の引き金となることが考えられる。
実験では、まず、培養細胞において低酸素−再酸素化誘発細胞死に対する新規保護物質を探索した結果、これまで細胞死保護作用の報告が全くないGR103691に細胞死抑制作用のあることが明らかとなった。そこで、マウスモデルにおいてGR103691の作用を検討したところ、GR103691は、虚血処置により認められる海馬CA1領域の細胞障害を顕著に抑制することが明らかとなった。また、その作用は、現在、我が国で脳保護薬として脳梗塞急性期に臨床応用されているedaravoneとほぼ同程度であることも明らかとなった。以上より、GR103691が新規脳保護薬のリード化合物となる可能性が考えられた。
本研究の最終目的は、低酸素ストレスおよび酸化的ストレスが関連する疾病の新規保護因子の探索であったが、上記のように、GR103691は、この目的に合致する化合物であると考えられ、共同研究の目的は、達成されたと考えている。一方、GR103691は、培養細胞系において、再酸素化後のROS上昇を抑制することが明らかになっているものの、細胞死抑制作用の詳細なメカニズムは不明であり、今後、このメカニズムについての検討を行うとともに、構造類自体の作用を比較検討することが必要である。これらの検討により、より有効な新規治療薬の開発に結びつくことが期待される。なお、GR103691の細胞死保護作用に関しては、日本大学産官学連携知財センター NUBICを通して、特許出願を行った。
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