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研究・社会貢献
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平成18年度選定


特殊な患者集団におけるコンプライアンスに影響する因子とその薬物動態・薬効に関する研究/臨床薬物動態学ユニット 教授 松本宜明


1. 研究の背景

医薬品の開発は限られた臨床試験において行われています。そのため、市販後の医薬品の治療効果は、総ての患者において必ずしも最適な投与量、投与間隔が明らかになっているわけでありません。医薬品を実際に処方される対象患者には、様々な合併症のある特殊な患者集団も含まれた状況になっています。コンプライアンスも様々な状況となり、医薬品の適正な使用は、開発時の効果判定に用いた試験だけでは足りない場合もあります。そこで、薬物動態解析と薬効解析を同時に行ない、治療効果の効率化をはかる因子を探索し評価することは重要と考えらます。さらに、薬物動態の基礎的な因子と薬効の関係を様々な角度から検証することが望まれています。

2. 研究の目的

本研究の目的は、市販されている医薬品の特殊な患者集団における治療効果を高めるための因子を検索し解析すること、開発医薬品の薬物動態の基礎的検討と薬効の統合を明らかにすること、共同研究において特殊な患者群におけるコンプライアンスに影響する因子およびその薬物血中濃度と効果の関係を調べることを目的とします。さらに、薬物動態の基礎的な実験と効果の関係を統合する方法をモデリング&シミュレーションにより様々な状況における解析を試みます。

3. 得られた成果

(1) 慢性疼痛患者の疼痛除去について

慢性疼痛は長期に鎮痛剤を服用します。NSAIDは胃腸障害が多いことから、胃腸障害のほとんどないアセトアミノフェンの投与について検討しました。アセトアミノフェンの国内での通常投与量は、1日1500mgとなっています。欧米においては疼痛除去に用いる時は3000−4000mgが投与されています。慢性疼痛患者における薬物動態と薬効の関係を調べました。1日1500-4000mg投与の血中アセトアミノフェン濃度推移および鎮痛効果推移を予測しました。1日1500mg投与では投与量が不足する確率が高く、1回600mg以上を1日4回投与することが有用と推察されました。さらに、疼痛ナビというホームページのフロンティアセミナーにおいてアセトアミノフェンの基本的な薬物動態・薬効評価を解説し、特殊な患者としてクリアランスの低下患者の投与量について発表しました。(2011年1月21日用量拡大が承認された。)

図1. 投与計画とアセトアミノフェン
(http://www.e-paincontrol.com/2nd/fron.html)

(2) 高齢者における胃内pHおよび胃排泄速度の検討

高齢者の消化管吸収におよぼす要因は様々あります。薬物吸収はその要因に大きく左右されます。寝たきりの高齢者においても、食物、薬物の吸収は大きな問題となります。胃内pHの上昇と胃内容排出速度を考慮し、報告されたアセトアミノフェンの薬物動態パラメータを用いて、それらの影響の検討を行い発表しました。その結果、高齢者などの除痛効果は、無酸症の影響および排泄速度の影響は小さいことが明らかとなりました。

(3) 小児におけるフル二トラゼパム静脈内投与に関する研究

小児痙攣発作はジアゼパム、ミタゾラムの静脈内投与が行なわれています。痙攣発作が止まらない場合は、海外ではフルニトラゼパムが使用されています。そこで、フルニトラゼパムの投与での治療効果の優位性を調べました。特にジアゼパムに比べ有意に有効であることを明らかにし公表しました。

(4) 特殊な患者に対する薬物治療効果の検討とその変動要因の探索

抗MRSA剤、抗真菌剤、抗不整脈剤等について適正な薬物治療の方法を構築することを試みました。その薬物治療を左右する変動要因を公表しました。

(5) 解析プログラムの開発

薬物動態をシミュレーションすることは、薬物治療の変動要因を明らかにすることができます。薬物動態プログラムをエクセルで構築し、解析プログラムの再構築を行ないました。さらに、汎用性、使用性を確認するために、3年生の医療薬学系実習IIIにおいて解析プログラムを使用させ、LMSを利用して同時実行を行いました。

(6) 投与設計のためのモンテカルロシミュレーション環境の構築およびモデリング&シミュレーションの臨床応用

モンテカルロシミュレーションによりコンピュータ上に仮想患者1000症例を発生させ、母集団薬物動態パラメータの検証を行い、投与設計の有用性を確認しています。さらに薬物動態と薬力学の同時解析に必要なモデリング&シミュレーションを行うことの必要性を公表しました。

図2. 薬物動態・薬効解析 13)


4. 今後の展開

  1. 開発時点では網羅しきれない患者集団に最適な投与量、投与計画を探索します。
  2. 薬物動態のモデリングとシミュレーションにより、基礎研究から応用研究への橋渡しを試みます。

5. 公表論文

  1. Pharmacokinetics/Pharmacodynamics of Acetaminophen Analgesia in Japanese Patients with Chronic Pain, Biol Pharm Bull, 30(1): 157-61(2007)

  2. Pharmacokinetic/pharmacodynamic simulation of acetaminophen analgesia in patients with chronic pain. 慢性疼痛. 2009;28(1):117-121.

  3. Treatment with flunitrazepam of continuous spikes and waves during slow wave sleep (CSWS) in children, Seizure, 16, 190-192 (2007)

  4. Clinical Effectiveness of Intravenous Flunitrazepam Administration for Prolonged Seizures. J Pediatr Neurol Vol.7. No.2 (Apr-Jun) 117-121. 2009

  5. Pharmacokinetics of antifungal agent micafungin in critically ill patients receiving continuous hemodialysis filtration. Yakugaku Zasshi. 2007;127(5):897-901.

  6. 各種パラメータが意味するものと生体の変動要因 薬物の吸収・分布に関する要因のみかた. 月刊薬事. 2007;49(9):25-30.

  7. MRSA感染症治療の臨床効果に影響を及ぼす因子と栄養摂取方法に関する検討、日本環境感染学会誌、23巻1号 Page27-34(2008.03)

  8. 抗Methicillin-resistant Staphylococcus aureus剤の選択基準の要因解析、薬学雑誌、128巻1号 Page81-87(2008.01)

  9. 抗Methicillin Resistant Staphylococcus aureus剤が長期投与となる要因の解析、薬学雑誌、129巻3号 Page347-352(2009.03)

  10. 集中治療患者におけるミカファンギンの適正使用、医薬ジャーナル、45(2),149-153(2009)

  11. Clinical factors affecting the efficacy of vancomycin in methicillin-resistant Staphylococcus aureus pneumonia. Int J Clin Pharmacol Ther. 2010 Aug;48(8):534-41

  12. Population Pharmacokinetic Analysis of Pilsicainide in Patients with Cardiac Arrhythmias. The Japanese Journal of Therapeutic Drug Monitoring. Vol. 27 (2)85-97 (2010)85-97

  13. 医薬品開発におけるモデリング&シミュレーションの活用—実例を中心に—、薬理と治療、36(4), 277-284(2008)

  14. 医薬品開発におけるモデリング&シミュレーション、医学のあゆみ、226(2), 171-172(2008)
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