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平成23年度実施状況(第133~138回)



第133回│薬剤師による喘息吸入指導

実施日 平成23年5月12日(木曜日)18時00分〜20時00分
講師 名古屋大学医学部附属病院薬剤部 薬剤主任 長谷川雅哉
喘息は、高い有病率、喘息死、喘息によって学業や、就労が障害されることなどの理由により、社会的に大きな問題となっています。気管支喘息が気道の慢性炎症性疾患であり、この気道炎症を抑制することが重要であることは、広く知られるようになり、喘息管理ガイド ラインの普及とともに、吸入ステロイド薬を治療薬とした喘息の長期管理が行われています。

経口薬と異なり吸入薬は、特殊な器具を必要とし、正しい吸入操作を行わないと薬物効果が期待出来ないばかりでなく、副作用が発生する可能性が増加します。医師が、外来診察時に吸入指導を行なうのに割ける時間は極めて少なく、吸入指導における、薬剤師 の役割は非常に重要です。しかし、一病院診療施設において行える吸入カウンセリングには、限界があるため、保険調剤薬局における薬剤師の吸入指導が不可欠です。さらに、患者さんがどこの薬局へ行っても、同じ内容の質の高い吸入指導が受けられるようにしなければなりません。そのために、シンプルで、より効率的な気管支喘息吸入療法指導が要求されます。

「アドピアランス」は、医療の主体が医師や薬剤師ではなく、患者にあり、「自分自身の医療に自分で責任を持って治療法を守る」ということです。薬剤師の服薬カウンセリングも吸入薬の使い方の説明だけでなく、その吸入薬をどうして使わなければいけないのか、副作用についても説明もおこない、自分の服用している薬について患者が少しでも興味を持ち、患者自身が自分の治療に参加することを支援しなければなりません。

薬剤師が気管支喘息の吸入薬の適正使用に積極的に関わることで、より良い喘息管理を行い、喘息により死なないようにすることはもちろんのこと、副作用のない薬物治療を行い、長年喘息と戦っている患者の、発作のない、自立した、QOLの高い生活に必ずつながるものと確信しています。

第134回│薬剤師を取り巻く社会情勢と医療政策・経済ビジョン

実施日 平成23年7月14日(木曜日)18時00分〜20時00分
講師 浜松医科大学医学部附属病院 薬剤部長 川上純一
2011年度は薬剤師にとってチーム医療の実践や成果が強く求められる1年になるであろう。昨年度より厚生労働省の「チーム医療推進会議」では、チーム医療における薬剤師の役割が幾度も議論されている。中医協においても、診療報酬の次期改定に向けて薬剤師の病棟配置に係るデータが収集されて議論が本格化するであろう。

病院薬剤師を取り巻く現状として、業務が増加すると共に医療の質・安全・患者サービスが求められる中で「薬剤師を増員したい」「その要求根拠となるような診療報酬の評価が欲しい」というのが本音であろう。しかし、病院経営を取り巻く環境は深刻であり、人件費比率を考慮すると単なる増員は認められない。診療報酬は重要であるが病院薬剤師には直接稼げるドクターフィは少なく、ホスピタルフィーに貢献することで医業収益を上げる構造になっている。そのため、新たな診療報酬上の評価が得られても増員を含めた人件費を薬剤部門の診療報酬だけで賄うこと自体が難しい。

「薬剤師が病院経営に貢献するためには2つの方策が考えられる。一つはチーム医療の中で活躍してチーム全体としての報酬算定に貢献する方法、二つ目はチーム医療の中で薬剤師機能を果たし診療効率を上げて医業収入の自体の増大を目指す方法である。一方で、薬剤師の法的独占業務は調剤である。薬務、DI、医薬品安全などの薬に関わる管理機能は、調剤と並んで病院全体の薬物治療を支える薬剤業務の根幹である。処方や化学療法レジメンへの監査は、単なるロジスティックではなくリスク管理としての薬剤師機能である。これら調剤を通じたリスク管理の成果こそが薬剤経済学的にはコスト回避やコスト予防の金銭価値として評価されるべきである。患者の薬物治療にかかわる病院薬剤師業務の全般をファーマシューティカルケアと捉え、それらの包括的かつ多元的な経済評価に基づいて、合理的な業務展開や社会貢献をすることが重要と考える。

第135回│がん化学療法の標準治療と有害事象対策

実施日 平成23年9月8日(木曜日)18時00分〜20時00分
講師 国立がん研究センター中央病院消化管腫瘍科 消化管内科長 島田安博
癌治療ガイドラインが発表され、分子標的薬剤が大規模比較試験の成績を基に、標準治療として推奨されている。大腸癌では抗VEGF抗体、抗EGFR抗体が従来のFOLFOX、FOLFIRIなどと併用され一般臨床で汎用されている。5-FUや5-FU/LVしかなかった1990年代から約20年の経過で、大腸癌の生存期間は8ヶ月から30ヶ月近くまで大きく改善し、がん化学療法の治療開発プロセスの教科書のように高く評価されている。

この生存期間の延長という画期的進歩の中で、急激に増加している大腸癌患者が治療から受ける利益は本当に改善したかを十分に検討する必要がある。多くの分子標的薬の臨床試験では奏効率の改善、無増悪生存期間の延長、そして生存期間の延長傾向が報告されてエビデンスとして広く評価されている。しかし、新らたに多彩な有害事象はしばしば患者のQOLを低下させる。分子標的薬に対する薬価は、その薬剤カテゴリーに対して与えられた称号のように高価である。残念ながら高薬価と臨床効果は相関しそうにない。KRAS遺伝子検査などによる「個別化」による治療対象群の絞り込みによる高額医療費の回避の動きもあるが、自ずと限界がある。

「分子標的薬の臨床的な意義をclinically relevantという視点で再考する時期に来ている。RCT(statistically significant)から、学会主導の治療ガイドラインへの掲載、一般診療への最新治療の導入という最近のがん治療均てん化戦略は、従来の根拠の乏しい抗がん剤治療を減らすことはできた。しかし、皮肉なことにエビデンスというわずかな有効性の前に振り回されているように思える。

がん患者のための治療の視点を忘れないようにしなければ真に標準治療を医療として提供し患者の利益を実現することはできない。

第136回│臨床研究に基づく薬剤師業務の評価 −地域薬局が提供するヘルスサービスのアウトカム−

実施日 平成23年11月17日(木曜日)18時00分〜20時00分
講師 日本大学薬学部医療コミュニケーション学研究室 教授 亀井美和子
地域薬局をベースとした地域で提供するヘルスサービスが、地域医療の質向上に貢献することが期待されている。ファーマシューティカル・ケアの概念が薬剤師の意識に変化を与え始めた1990年頃から、アメリカ、オーストラリアなどを中心に、病院だけでなく、薬局の薬剤師が主導するヘルスサービスが実践され、そのアウトカムが報告されるようになってきた。地域で提供されるヘルスサービスは、三次予防(重症化予防)だけでなく、二次予防(早期発見・早期治療)や一次予防(病気になるのを防ぐ)が中心である。例えば、糖尿病では重症者に要する医療費は軽症者の10倍以上ともいわれ、健康管理・疾病管理などの予防を重視した教育的支援を行うことが、QOLを維持向上だけでなく、医療費の増大を抑制することにも貢献すると考えられている。アウトカムが報告されたヘルスサービスの多くは、長期に薬物治療を行う必要のある慢性疾患患者を対象としたものである(対象疾患は、糖尿病、喘息、高血圧、脂質代謝異常症、うつ病、骨粗鬆症など)が、果たしてどのような成果が得られているのであろうか。

本講座では、海外で行われたアウトカム研究の概要とその背景、わが国での取り組み事例について紹介する。もはや当たり前となった長期投薬、薬剤交付後の患者に委ねられた薬物治療の状況などから考えると、わが国の薬局薬剤師が積極的かつ継続的に患者支援を行うことが医療にプラスの効果をもたらすことは確実である。それを研究成果として世の中に示すことは必要であろう。しかし、決して研究で終わらせてはならない。実践に役立てるからこそ、薬剤師が臨床研究を行う意義があると考える。

第137回│糖尿病における医療面接を見直す −全員で体験する医療面接シミュレーション−

実施日 平成24年1月19日(木曜日)18時00分〜20時00分
講師 沼津市立病院 副薬剤部長 真野徹
糖尿病治療において医療面接(患者指導)は非常に重要な意味を持ちます。
ところが医療現場で働いている薬剤師は、医療面接の実際的な技法に関して体系的な学習をしていない場合がほとんどです。また医療面接は密室で行われますので、それを評価される機会も、あるいは他の人の医療面接を見てスキルアップする機会もほとんどありません。

今回は、このような医療面接をフロア全員で見直してみたいと考えております。
まず行うのは模擬患者を用いた医療面接シミュレーションです。これを行うことにより医療面接に関する基本的な技術、ノウハウについて学習します。

その後、フロアの全員が3人一組(患者役:薬剤師役:観察者)となり、医療面接シミュレーションを体験してもらいます。”患者さん側から見た医療面接”、”薬剤師としての自分の医療面接に対する評価”、”第三者としての見る他人の医療面接”、これらは日常の医療現場では決して味わうことが出来ないエキサイティングな体験です。

これらの体験を通じて、フロアの全員が医療面接技法の更なるスキルアップを図れると考えております。

第138回│緩和ケア・在宅医療の推進と医療用麻薬製剤の適正使用について

実施日 平成24年3月8日(木曜日)18時00分〜20時00分
講師 厚生労働省 監視指導・麻薬対策課 課長補佐 江野英夫
がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画にもあるとおり、治療の初期段階からの緩和ケアの実施の重要な柱となるのが、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル等の「医療用麻薬」です。近年、がんの疼痛緩和が進み、「医療用麻薬」が患者さんにとってより身近なものとなってきました。

しかし、医療用麻薬を使用した疼痛緩和は、必ずしも末期がんに対するものではなく、治癒可能ながんの疼痛緩和にも使用されるということなど、一般の方はあまりご存じではないように思えます。モルヒネ等の医療用麻薬は、痛みのあるがん患者さんが医師の指導の下で適切に使用すれば、その依存性が問題になることはほとんどありませんし、これまでの医療用麻薬の使用経験からも医療用麻薬の副作用は十分に対応可能なものばかりです。

がん患者さんの疼痛を緩和し、そのQOLを向上させるためにも、モルヒネ等の医療用麻薬の使用による恩恵や、その使用についてがん患者さんがお持ちの不安の解消には、継続的に丁寧な説明を行うことが必要です。今後、地域医療の現場においてチーム医療の推進が図られる中、薬剤師がチーム医療の中核を占める一員として、これまで以上に専門性を踏まえた役割を果たすことが期待されています。

また、緩和医療・緩和ケアの主役は患者さんですが、医療用麻薬の「適正使用」の主役は、医師、薬剤師、看護師など医療関係者です。モルヒネ等の医療用麻薬を適切に使用するとともに、適正な管理を徹底させることにより医療用麻薬による乱用を未然に防止することが、薬のエキスパートとしての薬剤師に求められる重要な責務だと考えられます。
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