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平成29年度実施状況(第169~174回)



第169回|薬局薬剤師による慢性疾患患者支援課~国際比較研究結果から

実施日 平成29年5月12日(金) 19時30分~21時00分
講師 アルバータ大学 EPICORE センター リサーチフェロー 岡田 浩 氏
 先進諸国では、急速に進行する社会の高齢化の進行は医療制度をはじめとする社会保障制度を揺るがす喫緊の課題となっている。糖尿病や高血圧などの増え続ける慢性疾患患者に対し、先進諸国では薬局の活用がこの10 年ほどで急速に進められている。特にイギリスをはじめとするカナダ・オーストラリアといった英連邦諸国では、薬局がより地域の公衆衛生に関わるようになってきており、エビデンスも蓄積してきている。
 我々の研究部ループは、2015 年から2016 年にイギリス、カナダ、オーストラリア、アメリカで薬局での糖尿病やそのほかの公衆衛生への取り組みについて現地の薬剤師へのインタビューと質問紙による調査を実施した。本講座では、急速に変化している海外の薬局薬剤師の業務の紹介と、今回の薬剤師への調査結果について報告する。
 また、我々の研究グループが日本で、薬局薬剤師による短時間の患者支援の効果について、ランダム化比較試験により検証した、薬局での糖尿病患者支援研究:COMPASS プロジェクトの結果についても紹介する。現在の日本の薬局で実施可能な慢性疾患患者支援の方法について、COMPASS 研究の結果を基に紹介する。
以  上

第170回|薬剤師を取り巻く環境とICTについて

実施日 平成29年6月8日(木)19時30分~21時00分
講師 公益社団法人 日本薬剤師会 常務理事 渡邊 大記 氏
 医薬分業の初期から一つの指標とされていた分業率70%に手が届いた現在、関心事はもうその推進自体にはなく、薬剤師業務の質に向けられている。その様な中、「かかりつけ薬剤師・薬局」が掲げられ、そこにはICTを活用した服薬情報の一元的かつ継続的な把握も含まれている。しかし医療分野におけるICTに関しては、中央で協議されている内容と現場の感覚との間には、大きなギャップがあると感じざるを得ない。いつかそんな時代が来るのかというような感覚で居られる状況ではない。
 一定の基準の上で「電子お薬手帳」が診療報酬上の算定要件に認められ、平成28年3月末には厚生労働省から「電子処方せんの運用ガイドライン」も示された。そして各地域に存在する地域医療情報連携ネットワークについても、地域を越えて結んでいくための協議もなされている。これらの電子的な世界の中で、国家資格者としての一人の薬剤師を認証するHPKIを内包する「薬剤師資格証」の発行も始まっている。
 各現場においてもこれらの状況を把握し、正確に対応していくための視野と能力を備えておきたい。急速に進展する医療におけるICTを見据え、今、私たちが取る行動が、次代を形作っていくことになる。
以  上

第171回|薬薬連携・地域包括ケアによる残薬・ポリファーマシー解消

実施日 平成29年9月13日(水) 19時30分~21時00分
講師 フローラ薬局 代表取締役 篠原 久仁子 氏
 2015年厚労省から発表された患者のための薬局ビジョンでは、~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域へ」~をテーマに、医薬分業に対する薬局のあり方が見直され、地域包括ケアの地域のチーム医療の一員として、薬局の薬剤師が専門性を発揮して、患者の服用薬について一元的・継続的な薬学的管理を実施し、残薬やポリファーマシーの解消に取り組む「かかりつけ薬剤師・薬局」、「健康サポート機能」への再編が求められている。
 特に高齢者では、複数の慢性疾患を合併しやすく、他科受診によるポリファーマシーや薬の重複・相互作用、残薬問題に加えて、日常生活能力(ADL)の低下、認知症の発症や嚥下障害など、フレイル、サルコペニアが生じやすいため、在宅での服薬管理と栄養管理は困難となりやすい。 
 そのため、団塊の世代が75歳以上となり、3人に1人が65歳以上となることが予想される2025年を目処に、重度な要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムを、地域の特性に応じて構築していくことが必要とされている。さらに健康サポート薬局では、かかりつけ薬剤師の機能、医療機関・地域包括支援センターとの地域連携に加えて、地域住民の疾病予防や受診勧奨など地域の健康サポートの地域活動の実践が重視される。
 当フローラ薬局では、地域連携による在宅でのポリファーマシー・残薬解消・処方提案を実践し、ハーブ園と健康教室づくり、漢方・薬膳・アロマセラピー教室、育薬・薬物乱用防止・地域連携による禁煙支援の教室の地域活動の実績などが健康サポート薬局として認められ、その後もスタッフ教育をしながら継続可能な活動実績をあげている。
 当日は、フローラハーブ園のフレッシュハーブティーを試飲して頂き、これからの医薬分業の新時代の魅力ある地域薬局として、明日から実践できるコツを紹介していく。
以  上

第172回|ストレスの理解とストレスマネジメント

実施日 平成29年10月27日(金) 19時30分~21時00分
講師 筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授 水上 勝義 氏
 現代はストレス社会と言われる。職場はもちろん,若年者から高齢者までストレスにさらされ,不眠やうつ病などメンタルヘルスの問題を生じるリスクがある。ストレス対策にはストレスを理解し,ストレスとうまくつきあっていくことが大切である。そこでこの講座では,ストレスとは何か,ストレスで引き起こされる病気にはどのようなものがあるか,ストレスに強くなるには(ストレス耐性を高めるには)どのような方法があるか,そしてストレスマネジメント法にはどのようなものがあるか,などを学習する。
ストレッサーを脳で認知した後に,脳や身体に一連の反応が生じる。慢性的に高ストレス状態が続くとうつ病をはじめ様々な心身の不調が現れる。ストレス反応は,ストレッサーに対する認知の仕方や,ストレスに対するコーピングによって変化する。ストレス状況を変えるため状況分析や行動をおこし努力する問題中心コーピングは,ストレス耐性を高めると同時にパフォーマンスの向上も見られる。情動中心コーピングには,状況に対する認知の仕方の工夫や,気分転換などが含まれる。なかにはメンタルヘルスを悪化するコーピングもあるため注意が必要である。
 ストレスマネジメントとは,ストレス反応の低減や予防を目的とした対応策のことである。ストレスマネジメントとしては健康的な生活習慣が基本である。また適度な運動や趣味を楽しむなどの気分転換,リラクセーションなども有用である。近年は認知認知行動療法の効果が報告されている。なお,どのようなストレッサーに対しても周囲のサポートが有効なことが知られている。
今後かかりつけ薬剤師は,患者や介護者のメンタルヘルスの相談に応じたり,患者や家族のストレスに気づきストレスマネジメント法を紹介したり,必要に応じて専門医の受診を勧めることもあるだろう。本講座はその際に一助になることを期待する。
以  上

第173回|災害時の薬剤師の役割

実施日 平成30年1月11日(木) 19時30分~21時00分
講師 日本大学薬学部 医療薬学研究室 教授 岸川 幸生 氏
 2011年3月に発生した東日本大震災では、多くの薬剤師が医療支援活動に従事した。私自身、ボランティア薬剤師として東日本大震災の最大の被災地である石巻の拠点病院であった石巻赤十字病院で活動した。
 薬を求めて次々と押し寄せる患者の対応、全国各地から駆け付けた医療救護チームとの連携、送られてくる支援物資の管理、多くの被災者が避難している避難所での活動など、日本がかつて経験したことの無い状況の中、次々と発生する問題に対して石巻赤十字病院の薬剤師を中心として全国各地から駆け付けた薬剤師仲間が薬のプロフェッショナルとして知恵を振り絞って対策を考え実行していった。
 マス・メディアでは震災時の薬剤師の活動はあまり取り上げていないが、薬剤師は確実に医療チームの一員として被災地医療に充分貢献したと考えている。そしてこの活動は、平時の病院や薬局などでの薬剤師業務に繋がっていくものと考えている。
 今回は、石巻赤十字病院や避難所での活動経験を紹介する。その経験から浮き彫りになった問題点を受講者の方々と共有し、災害時に求められる薬剤師の職能とそこから発展する薬剤師のこれからの職能を一緒に考える機会になれば幸甚である。
以  上

第174回|「支える医療」としての在宅医療 ~がん、非がんを問わず患者のいのちと生活に薬剤師も伴走する~

実施日 平成30年2月22日(木) 19時30分~21時00分
講師 医療法人財団千葉健愛会あおぞら診療所 理事長・院長 川越 正平 氏
 はじめに、在宅医療の根幹をなす理念である「生活の視点」と「疾病の軌道」について解説する。それらを踏まえた上で、リハビリテーションや緩和ケアを統合する「支える医療」として、在宅医療が推進されている。医師、訪問看護師のみならず、薬剤師がその一翼を担う意義は大きい。
 がん、非がんを問わず、患者のいのちと生活に伴走するためには、多職種協働、そして、医療と介護の統合が必要不可欠である。要介護者に生じた誤嚥性肺炎や認知症者のセルフマネジメントを例に、連携・協働の意義について解説する。さらに、医療者の役割は、すでに診断されている疾病の管理にとどまらない。患者の全体像を捉え、人生の軌道を予見して、どのような介入に意義があるのかに注力する必要がある。
要介護者や終末期を迎える患者は今後増加する一方であることから、我が国の在宅医療も諸外国と同様に、遠からず、医師だけでなく、看護師や薬剤師が重要な役割を担うことになるだろう。そのために、薬剤師はミニドクターを目指すのではなく、看護師が確立しているような確固たる専門性を構築してほしい。にわかに即戦力を身につけることは難しいことを考慮すると、もう一刻も猶予はない。速やかに取り組みを開始し、経験を積み重ねていく必要がある。
 実践にあたっては、いったん薬剤から離れて考えることをおすすめしたい。厚生労働省医薬・生活衛生局長の言を引用するまでもなく、「薬から食へ」が今日のキーワードと言える。つまり、処方薬にとどまることなく、食べ物、嗜好品、OTC医薬品など、口から入るものの全貌把握に努め、健康に及ぼす影響や改善点について広く助言する役割である。特に、医師が得意ではない領域で貢献することによって、存在意義を打ち出すことができよう。
 具体例として、低栄養(フレイル)と認知症を挙げたい。前者は、栄養介入、後者は非薬物療法が介入の中心となる。もちろん、関わりの中で、骨粗鬆症や認知症に対する治療薬、ポリファーマシー対策など、薬に関することについて専門性を発揮する場面も出てくるが、それらは患者支援の一部であることを忘れるべきではない。在宅医療に取り組む医師とて、元外科医はメスを置いているし、元内科医も皮膚科や整形外科、精神科など専門外の領域について学び、対応力を身につけている。歯科医師は、口腔ケアや摂食嚥下障害について新たに学ぶことになる。そうやって、患者の信頼を勝ち得ていることを参考にしてほしい。
 最後に、地域に貢献する事例として、松戸市医師会が取り組む「まちっこプロジェクト」を紹介する。医師会医師が小中学校において健康啓発にかかる出前講座を行うものである。単に知識を伝授する授業を行うのではなく、習ったことを周りの大人に伝えるのが宿題だという形をとることにより、“子どもたちの力で地域はもっとつながり合える”というねらいがある。現代において、薬剤師が改めてよろづ相談所機能を担うことを期待したい。
以  上
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