令和元年度実施状況(第181~185回)
第185回|真菌と深在性真菌症-基礎から最新のトピックまで-
実施日 | 令和2年1月14日 (火)19時30分~21時00分 |
講師 | 日本大学薬学部 病原微生物学研究室 教授 村山 琮明 先生 |
I. 真菌の基礎知識から,II. その感染症特に深在性真菌症について概説し、III. 近年のトピック,そしてIV. 災害時における真菌症について紹介する。
Ⅰ 医真菌学の基礎:真菌の学問的分類,形態と特徴,そして生活環について述べる。
Ⅱ 真菌感染症:真菌が起こす感染症を真菌感染症(真菌症)といい,その感染部位により表在性(浅在性)真菌症,深部真菌症,と深在性真菌症(内臓真菌症)の3つに分けられる。今回は主に深在性真菌症について述べる。世界の真菌症患者は12億人,世界の新たな重症真菌患者(年間)は3億人,そして真菌症による世界の年間死亡者は166万人と推定されている。日本の3大深在性真菌症は,アスペルギルス症,カンジダ症,そしてクリプトコックス症である。日本で見られるその他の真菌症原因菌は,大気中や土壌に存在するものがほとんどである。そのため,空気中に浮遊している胞子などを吸引して,副鼻腔や肺に定着し,感染するのが通常である。そのほとんどが日和見感染として易感染患者に感染する。個々の真菌症について詳細に述べる。
Ⅲ 話題の真菌(症):1)世界でアウトブレイクを起こしているCandida aurisという日本で発見された菌について,2) 膵臓がんとマイコバイオーム(真菌叢)が及ぼす作用,そして3)真菌血症に先行してtranslocationが起こり,マイコバイオームが変化している論文を紹介する。
Ⅳ 真菌と災害:中越地震後にエノキダケ栽培工場の復旧作業に従事していたボランティアにみられたorganic dust toxic syndrome (ODTS),および東日本大震災の津波で溺水した肺患者にみられたスケドスポリウム症について紹介する。
まとめ
真菌症はけっして少なくない疾患であるにも関わらず,その実態が周知されていない。培養に時間がかかり,判定には専門的知識を要すること,血清診断も全菌種に応用できるものではなく,まして個別に菌種を判断できるものは少ない。抗真菌薬も数が少なく,高齢社会,グローバル化,高度医療の発達などに伴って,真菌症は益々問題視されるであろう。真菌症の重要性を認識していただきたいと願っている。
以 上
Ⅰ 医真菌学の基礎:真菌の学問的分類,形態と特徴,そして生活環について述べる。
Ⅱ 真菌感染症:真菌が起こす感染症を真菌感染症(真菌症)といい,その感染部位により表在性(浅在性)真菌症,深部真菌症,と深在性真菌症(内臓真菌症)の3つに分けられる。今回は主に深在性真菌症について述べる。世界の真菌症患者は12億人,世界の新たな重症真菌患者(年間)は3億人,そして真菌症による世界の年間死亡者は166万人と推定されている。日本の3大深在性真菌症は,アスペルギルス症,カンジダ症,そしてクリプトコックス症である。日本で見られるその他の真菌症原因菌は,大気中や土壌に存在するものがほとんどである。そのため,空気中に浮遊している胞子などを吸引して,副鼻腔や肺に定着し,感染するのが通常である。そのほとんどが日和見感染として易感染患者に感染する。個々の真菌症について詳細に述べる。
Ⅲ 話題の真菌(症):1)世界でアウトブレイクを起こしているCandida aurisという日本で発見された菌について,2) 膵臓がんとマイコバイオーム(真菌叢)が及ぼす作用,そして3)真菌血症に先行してtranslocationが起こり,マイコバイオームが変化している論文を紹介する。
Ⅳ 真菌と災害:中越地震後にエノキダケ栽培工場の復旧作業に従事していたボランティアにみられたorganic dust toxic syndrome (ODTS),および東日本大震災の津波で溺水した肺患者にみられたスケドスポリウム症について紹介する。
まとめ
真菌症はけっして少なくない疾患であるにも関わらず,その実態が周知されていない。培養に時間がかかり,判定には専門的知識を要すること,血清診断も全菌種に応用できるものではなく,まして個別に菌種を判断できるものは少ない。抗真菌薬も数が少なく,高齢社会,グローバル化,高度医療の発達などに伴って,真菌症は益々問題視されるであろう。真菌症の重要性を認識していただきたいと願っている。
以 上
第184回|「ほめゲーム」による体験学習
~ちょっとした褒め言葉掛けで患者さんとよい空気を作りましょう。一カ月分の褒めて褒められる実践を!~
実施日 | 令和元年10月25日 (金)19時30分~21時00分 |
講師 | 一芽(ひとつめ)代表 有我 公一 先生 |
いくら本を読んでも、どれだけ良い話を聞いたとしても、聞いた側、受け取った側が実践しなければ役には立たない。特にコミュニケーションに関しては、知ってるけれどやっていない。感情が邪魔をしてできない。こういったことが多いのではないでしょうか?
「人を褒める」この簡単なようでいて難しいことでもある、なんとも判断のしにくいコミュニケーションの道具をこの講義では実践練習します。
私もそうでした。ほめる事に関してかなりの量の書籍を読み込み、心理学やコーチングなども学びましたが、「いいこと聞いたな、こうやって褒めればいいのか」と知ったとしても結局実践するかどうかは自分次第です。ならば、半強制的にでも実践練習する場が作れないか、と。
そして、ゲーム化するという着想を得て、できあがったのが「ほめゲーム」です。
褒めて褒められる実践練習の場を作り、手軽にくり返し行えるゲームです。
社員研修での使用、大学の研究室での使用、福祉の現場などで活用され、中には2年以上朝礼で活用してくださっている企業様もあります。そんなゲームとなりました。
この講義では「ほめゲーム」を遊びつつ、褒めて褒められる実践経験を行っていきます。
基本的には、リラックスして楽しんでくだされば大丈夫です。
患者さんとのちょっとしたほめ言葉がけで、良い空気ができあがるように、褒めて褒められる実践を行いましょう。「ほめゲーム」製作者 一芽より。
以 上
「人を褒める」この簡単なようでいて難しいことでもある、なんとも判断のしにくいコミュニケーションの道具をこの講義では実践練習します。
私もそうでした。ほめる事に関してかなりの量の書籍を読み込み、心理学やコーチングなども学びましたが、「いいこと聞いたな、こうやって褒めればいいのか」と知ったとしても結局実践するかどうかは自分次第です。ならば、半強制的にでも実践練習する場が作れないか、と。
そして、ゲーム化するという着想を得て、できあがったのが「ほめゲーム」です。
褒めて褒められる実践練習の場を作り、手軽にくり返し行えるゲームです。
社員研修での使用、大学の研究室での使用、福祉の現場などで活用され、中には2年以上朝礼で活用してくださっている企業様もあります。そんなゲームとなりました。
この講義では「ほめゲーム」を遊びつつ、褒めて褒められる実践経験を行っていきます。
基本的には、リラックスして楽しんでくだされば大丈夫です。
患者さんとのちょっとしたほめ言葉がけで、良い空気ができあがるように、褒めて褒められる実践を行いましょう。「ほめゲーム」製作者 一芽より。
以 上
第183回|高齢者のポリファーマシーとフレイルを考慮した安全な薬物療法
実施日 | 令和元年9月12日(木)19時30分~21時00分 |
講師 | 東京大学大学院医学系研究科 加齢医学 東京大学医学部附属病院 老年病科 講師 小島 太郎 先生 |
高齢者の増加とともに、ポリファーマシーの問題が大きくなっている。高齢患者は多疾患を有するだけでなく、多くの身体症状を有すため、薬物治療を必要とする病状は極めて多い。薬剤の発達に伴いあらゆる慢性疾患に対して多種多様な薬剤が処方可能であり選択肢も広くなったが、多くの疾患診療ガイドラインでは高齢者に対して十分なエビデンスがないにも関わらず使用を推奨することが多い。
そのため高齢者では多剤服用かつハイリスク状態、すなわちポリファーマシーの状態となることが多い。一つ一つの薬剤は有用性が高くても多数内服することにより薬物有害事象は起きやすくなり、しかも高齢者の薬物有害事象は発見しにくく、重症例が多い。Potentially inappropriate medication(高齢者で特に慎重な投与を要する薬剤)や処方カスケードなど、高齢者の薬剤では配慮しなければならないことがある。
同時に高齢者の機能障害にも着目する必要がある。特にフレイルと呼ばれる要介護状態の前段階になると、さまざまな疾患に対するエビデンスが少なく、若年者において有効かつ安全だといわれる薬剤でも、有用性や安全性について疑問が生じるこおがある。
近年高齢者の薬物療法の見直しのためのガイドラインが策定されたり、老年薬学に関する学会が設立されたり、厚労省が高齢者の医薬品適正化のためのガイドラインを作成したりするなど、高齢者の処方を見直すための手段が多数できてきた。診療報酬改定においても、医療機関や保険薬局においてポリファーマシーの見直しに関する管理料ができた。
ポリファーマシーの見直しのためには、これらの手段を有効利用しつつ医師・薬剤師など多職種で協働して対応することが必要である。本講演では、これらのことについて解説していく。
以 上
そのため高齢者では多剤服用かつハイリスク状態、すなわちポリファーマシーの状態となることが多い。一つ一つの薬剤は有用性が高くても多数内服することにより薬物有害事象は起きやすくなり、しかも高齢者の薬物有害事象は発見しにくく、重症例が多い。Potentially inappropriate medication(高齢者で特に慎重な投与を要する薬剤)や処方カスケードなど、高齢者の薬剤では配慮しなければならないことがある。
同時に高齢者の機能障害にも着目する必要がある。特にフレイルと呼ばれる要介護状態の前段階になると、さまざまな疾患に対するエビデンスが少なく、若年者において有効かつ安全だといわれる薬剤でも、有用性や安全性について疑問が生じるこおがある。
近年高齢者の薬物療法の見直しのためのガイドラインが策定されたり、老年薬学に関する学会が設立されたり、厚労省が高齢者の医薬品適正化のためのガイドラインを作成したりするなど、高齢者の処方を見直すための手段が多数できてきた。診療報酬改定においても、医療機関や保険薬局においてポリファーマシーの見直しに関する管理料ができた。
ポリファーマシーの見直しのためには、これらの手段を有効利用しつつ医師・薬剤師など多職種で協働して対応することが必要である。本講演では、これらのことについて解説していく。
以 上
第182回|糖尿病の薬物療法
実施日 | 令和元年7月10日 (水)19時30分~21時00分 |
講師 | 船橋市立医療センター 代謝内科 副部長 下山 立志 先生 |
糖尿病とは
自覚症状がなく放置しがちですが、失明、腎不全、神経障害、心筋梗塞等の合併症を起こすのが糖尿病の怖さです。
1型糖尿病の薬物療法
インスリンの補充が基本です。主な副作用は低血糖ですが、稀な副作用としてインスリンアレルギーなどがあります。
2型糖尿病の薬物療法
2型糖尿病はインスリン抵抗性がメインです。初期にはインスリン分泌が保たれていますが、徐々に落ちていきます。病期に応じて治療を変えます。
メトホルミン
骨格筋でのインスリン作用増強、肝臓での糖新生の抑制、肝臓でのグルカゴン作用阻害、消化管でのブドウ糖吸収抑制によって効力を発揮します。腎機能低下、高齢者などは要注意です。
SU剤
作用時間が長いのが特徴です。高齢者、腎機能低下例は低血糖リスクが高いです。DPP-4阻害薬との併用時には減量が必要です。
グリニド
作用時間が短いため、低血糖のリスクは低いです。腎機能低下例には注意が必要です。レパグリニドはクロピドグレルとの併用で重症低血糖をきたすリスクがあるので注意が必要です。
α-グルコシダーゼ阻害薬
上部小腸でのブドウ糖吸収を阻害して食後高血糖を抑制します。大腸ガスが増え、腹部手術歴のある患者ではイレウスのリスクが高くなるので注意が必要です。
インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬)
インクレチンの作用を増強するのがDPP-4阻害薬、GLP-1の利点だけ作用させるのがGLP-1受容体作動薬です。DPP-4阻害薬は低血糖の副作用が少ないことが知られていますが、消化器症状、関節痛、炎症性腸疾患、水疱性類天疱瘡などに注意が必要です。GLP-1受容体作動薬は消化器系の副作用がに要注意です。心血管保護作用のエビデンスが集積してきました。
ピオグリタゾン
インスリン抵抗性を改善します。大血管障害の抑制、肝の線維化抑制のエビデンスがあります。有名な副作用に浮腫、骨粗鬆症があります。
以 上
自覚症状がなく放置しがちですが、失明、腎不全、神経障害、心筋梗塞等の合併症を起こすのが糖尿病の怖さです。
1型糖尿病の薬物療法
インスリンの補充が基本です。主な副作用は低血糖ですが、稀な副作用としてインスリンアレルギーなどがあります。
2型糖尿病の薬物療法
2型糖尿病はインスリン抵抗性がメインです。初期にはインスリン分泌が保たれていますが、徐々に落ちていきます。病期に応じて治療を変えます。
メトホルミン
骨格筋でのインスリン作用増強、肝臓での糖新生の抑制、肝臓でのグルカゴン作用阻害、消化管でのブドウ糖吸収抑制によって効力を発揮します。腎機能低下、高齢者などは要注意です。
SU剤
作用時間が長いのが特徴です。高齢者、腎機能低下例は低血糖リスクが高いです。DPP-4阻害薬との併用時には減量が必要です。
グリニド
作用時間が短いため、低血糖のリスクは低いです。腎機能低下例には注意が必要です。レパグリニドはクロピドグレルとの併用で重症低血糖をきたすリスクがあるので注意が必要です。
α-グルコシダーゼ阻害薬
上部小腸でのブドウ糖吸収を阻害して食後高血糖を抑制します。大腸ガスが増え、腹部手術歴のある患者ではイレウスのリスクが高くなるので注意が必要です。
インクレチン関連薬(DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬)
インクレチンの作用を増強するのがDPP-4阻害薬、GLP-1の利点だけ作用させるのがGLP-1受容体作動薬です。DPP-4阻害薬は低血糖の副作用が少ないことが知られていますが、消化器症状、関節痛、炎症性腸疾患、水疱性類天疱瘡などに注意が必要です。GLP-1受容体作動薬は消化器系の副作用がに要注意です。心血管保護作用のエビデンスが集積してきました。
ピオグリタゾン
インスリン抵抗性を改善します。大血管障害の抑制、肝の線維化抑制のエビデンスがあります。有名な副作用に浮腫、骨粗鬆症があります。
以 上
第181回|薬剤師が知っておくべき食の安全情報
実施日 | 令和元年5月23日(木)19時30分~21時00分 |
講師 | 東京理科大学薬学部 教授 内閣府食品安全委員会 委員 堀口 逸子 先生 |
日本薬学会によれば、「薬学の分野では、レギュラトリーサイエンスの対象として医薬品、食品、生活環境等があげられます」とされています。受講者の皆様は、その食品について、どのような情報をもっておられるのでしょうか。また、患者や一般消費者に対して、日常、どのような情報を提供されておられるのでしょうか。食品衛生については、テレビ番組等でもとりあげられることが少なくありません。また残念ながら、食中毒事件についての報道もあります。レギュラトリーサイエンスへの造詣が深い薬剤師等の皆様は、患者や一般消費者に対して食品安全に関する正しい情報を提供できる職種として、大きく期待されています。
レギュラトリーサイエンスは、有効性や安全性を予測、評価する科学であり、食品安全分野での安全性の評価、いわゆるリスク評価機関は約15年前に設置された「内閣府食品安全委員会」です。医薬品や医療機器の有効性や安全性の評価を行うPMDA(医薬品医療機器総合機構)をイメージしていただければと思います。
この講座では、食品安全について、我が国におけるその仕組み、消費者の関心、食品個々の最近の話題、日本における問題等について、お話します。
また、本講座が、受講者の皆様の食品分野におけるレギュラトリーサイエンスへの理解を深めていただく機会となれば幸いです。
以 上
レギュラトリーサイエンスは、有効性や安全性を予測、評価する科学であり、食品安全分野での安全性の評価、いわゆるリスク評価機関は約15年前に設置された「内閣府食品安全委員会」です。医薬品や医療機器の有効性や安全性の評価を行うPMDA(医薬品医療機器総合機構)をイメージしていただければと思います。
この講座では、食品安全について、我が国におけるその仕組み、消費者の関心、食品個々の最近の話題、日本における問題等について、お話します。
また、本講座が、受講者の皆様の食品分野におけるレギュラトリーサイエンスへの理解を深めていただく機会となれば幸いです。
以 上